名脇役の巨人・亀井が出場機会激増の3年前に「もう灰になりました…」の〝本音〟

名脇役、黒子として巨人を支えた亀井(東スポWeb)

最後は灰になる。巨人・亀井善行外野手(39)が21日に会見し、今季限りでの現役引退を正式表明した。故障に泣かされ続けた背番号9は、ある意味〝らしく〟ケガを理由としてプロ生活に幕を引く。生存競争が激しい巨人ひと筋で17年間プレーできたのはなぜか。「黒子」に徹した野球人生で垣間見せた、その一端とは――。

自らの幕引きに、亀井は何度も言葉を詰まらせた。一人で悩み続け、引退を決断したのは5月。しかし「一番に家族に伝えなきゃいけないんですけど『引退する』という言葉が怖くてなかなか言い出せなかった」という。昨年9月に本塁クロスプレーで左股関節を負傷。内転筋に3か所の肉離れを起こし、まひ症状も残った。理想とする打撃を取り戻せず、今年9月上旬に原監督と大塚球団副代表に引退を申し出て家族にも重大決心を伝えた。

故障だけでなく、幾多の困難が立ちはだかった。亀井は「正直、本当にやっていけないという気持ちになったことは何度もありました」と語ったが、偽らざる本音だろう。

あの時もそうだった。2018年はリーグ3位からの下克上に挑んだが、CSファイナルステージで広島に3連敗を喫して終戦。3年契約最終年だった高橋由伸前監督をはじめとするチームは広島で解散し、敗戦翌日の10月20日に敵地から続々と帰京の途に就いた。その際、亀井と同じ新幹線の車内で乗り合わせ「1年間、お疲れさまでした」と言葉をかけた。返ってきた言葉に〝来る日〟が近づいていることを直感した。

「もう灰になりました…。話が違いますよ、由伸さん(笑い)」

決して采配批判などではない。由伸前監督とは自主トレをともにするなど誰よりも敬い、選手のかがみとしてきた間柄だからこそ出た言葉だ。亀井は誰よりも「自己犠牲」とも評されるチームへの「献身性」が強かった。チームの勝利のためならば、心身ともにボロボロになるまでプレーした。当時の外野陣のチーム構想はゲレーロ、陽岱鋼、長野(現広島)を固定し「カメはシーズンを通して代打で起用する予定だった」(チーム関係者)。

しかし、陽岱鋼が開幕直後に死球を受けて左手を骨折して2か月以上も離脱。ゲレーロも夏場に打撃不振とコンディション不良で二軍に降格するなどの誤算に見舞われ、亀井の出場機会が〝激増〟した。最終的に出場123試合のうち109試合でスタメンで、9年ぶりの規定打席到達となった。

レギュラーをつかむことを捨てたわけではない。だが、亀井が会見で明かしたように「ケガ持ちの自分にとってはレギュラーは難しい。何とか名脇役、黒子に徹したい」との思いもあった。いつギブアップしても不思議ではない困難の数々をハネ返せたものは何か。「何度でもはい上がってやろうという気持ちにさせてくれたのは、本当にファンの方のおかげだと思っています」と感謝を口にした。

公式戦は残り2試合。CS進出が決まれば、戦いはまだ続く。

「泣いても笑っても残り少ないんで。前もヒーローインタビューで言いましたけど、体が壊れてもいいと思っているんで、思い切りバットを振りたいなと思います」

背番号9が現役最後の下克上をかけ、完全燃焼する。

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