まだ言わないで

 降参? 「いや、もうちょっと待って」-。なぞなぞやクイズを出題されて答えが浮かばない、画面の向こうの俳優さんの名前が出てこない…特別に意地っぱりなつもりはないのだが、こんな言葉をよく口にする。「まだ言わないで」▲答えを待つ側にはしばらく退屈な時間だが、部下や後輩を育てる「コーチング」では〈簡単に答えを示さない〉のが初歩の心得だ。相手が考える機会を奪ってしまうから…だという。ど忘れした事柄を自力で思い出そうと試みるのは手軽な脳トレ法の一つ▲そんなことをあれこれ考えたのは、昨日の新聞に載った「衆院選序盤の世論調査結果」が“せっかちな答え合わせ”に思えてならないからだ▲選挙戦は始まったばかりで、別のページではまだ、候補者たちの横顔が紹介されている。こんな時点で早々と優劣を論じたら関心が薄れないか、投票意欲を削がないか、と心配になる▲そんな思いとは無関係に、公示直後の世論調査は恒例になった。調べてみたら前にも同趣旨のことを書いた。ただし、4年前といくらか様子が違うのは全国的にも県内にも「接戦区」が多いことだ▲言わないで…と思っていたら「まだまだ分からない」と返事が来た。1票の重みを実感する選挙、選びがいのある選挙になりそう-調査結果は教える。(智)

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