「塩見を救ってあげて」 ヤクルト、痛恨の“守乱”で逆転負け OBは主軸の奮起期待

ヤクルト・山田哲人、村上宗隆、青木宣親(左から)【写真:荒川祐史】

痛恨失策の塩見は急成長と1番定着でチームを押し上げた功労者

■広島 11ー7 ヤクルト(21日・神宮)

6年ぶりのリーグ優勝へ秒読みに入っているヤクルトは21日、本拠地・神宮で広島に7-11の逆転負けを喫した。3点リードの7回、塩見泰隆外野手の痛恨のエラーで追いつかれ、試合をひっくり返された。2位・阪神が0.5ゲーム差に肉薄。残り5試合でマジック3としている燕の優位は変わらないが、現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、不吉な兆しを感じ取った。

「ヤクルトの優勝は、ほぼ大丈夫だと思います。しかし、万が一優勝を逃した場合、塩見には気の毒ですが、原因はこのエラーということになるかもしれない。シーズンのターニングポイントになりかねない試合であり、ターニングポイントになりかねないプレーです」。野口氏はそう指摘する。

6-3とリードして7回を迎えたヤクルトは、6回途中から4番手で登板していた田口麗斗が続投。しかし、先頭の會澤に右前打、続く代打・長野に四球を許し、無死一、二塁のピンチを背負う。ここで宇草に中前打を浴びた。中堅手の塩見は猛然と前進したが、地を這うようなゴロは差し出したグラブの下をすり抜け、外野を転々。走者2人に続いて、打った宇草まで生還し、あっという間に同点とされた。

田口は続く小園にも中前打され、リリーフしたアルバート・スアレスも坂倉に勝ち越し適時打、菊地に左前適時打、會澤に右越え2点二塁打とつるべ打ち。流れを止められなかった。

ヤクルト・塩見泰隆【写真:荒川祐史】

村上が復調の兆し「4番が打った試合は絶対勝て」ノムさんの教え

どうしても勝ちたい試合だった。2点ビハインドの4回には、代打・川端慎吾内野手の中前適時打で1点差に迫り、2死満塁から山田哲人内野手が左前へ同点適時打。さらに、それまで11打席連続無安打のトンネルに入っていた4番・村上宗隆内野手も、左中間を破る走者一掃の3点二塁打で続き、この時点で圧勝ムードとなった。

野口氏は「私は現役時代、ヤクルトの監督を務めていた野村克也さんをはじめ、数々の監督から『4番が打った試合は絶対に勝て』と厳命されてきました」と言う。翌日以降のチームの勢いに大きな影響を与えるからだ。苦しんでいた村上が殊勲打を放ったこの試合も、まさにそれだったのだ。

塩見のエラーは高くつく可能性がある。とはいえ、そもそも塩見の急成長と1番定着がなかったら、昨季まで2年連続最下位のヤクルトの躍進はなかったかもしれない。

にわかに垂れ込めた暗雲を振り払えるのは誰か。野口氏は「精神的支柱のベテラン・青木(宣親外野手)、主将の山田、そして復調の兆しがはっきり見えた4番・村上。もう1度チームを引き締め直せるのは、この3人だと思います」と指摘する。

「仮にエラーをしたのが経験豊富な青木であったら、放っておいても自分で取り返すでしょう。しかし、キャリアが浅い塩見ですから心配です。万が一V逸となれば、来季以降に悪い影響を及ぼしかねない」と続け、「青木、山田、村上に、塩見を救ってあげてほしい」と語った。

燕と虎のつばぜり合いは、まだまだ波乱含み。この先も、思わぬ落とし穴が待っていないとは限らない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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