5秒加算ペナルティも何のその。2021年を席巻のキスが週末初戦でタイトル確定/ETRC最終戦

 10月16~17日にイタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで開催された2021年のETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ最終戦は、今季好調のノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が土曜予選でポールポジションを獲得すると、オープニングヒートで週末早々に自身3度目のドライバーズタイトルを確定。日曜のレース3も制覇してシーズン11勝目を挙げ、自らの戴冠に華を添える結果となった。

 度重なるカレンダー改訂により実質的“ラウンド6”となった第8戦は、開幕から今季好調の選手権リーダーが45点近いポイントリードを築いて迎えることとなった。しかし、その優位に甘んじることなく予選に臨んだハンガリー出身のキスは、ライバルとなるランキング2位のサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)と、シリーズ6冠を誇る“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)を従え、土曜予選で今季9回目の最前列を確保し、最高の方法で週末をスタートさせる。

 これでレース1に向けたキスのタイトル獲得条件は、14点を獲得すれば文句なしの戴冠となり、レンツや同ランキング3位のアダム・ラッコ(バギラ・レーシング/フレイトライナー)の動向如何に関わらず、勝つか2位に入れば2021年のシリーズチャンピオンが決まる形となった。

 土曜現地14時35分にスタートが切られたレース1は、そのポールシッターがまずは加速勝負で主導権を握ったものの、フロントロウに並んだ選手権ライバルのレンツが逆転に向け意地を見せ、ターン1で鮮やかなオーバーテイクを披露。キスの鼻先を抑え込んでいく。

 このまま2位フィニッシュでもタイトル獲得に支障のなかったキスだが、レンツの勝利を良しとせず5周にわたってマンのリヤバンパーに張り付くと、一瞬のチャンスを逃さず首位奪還に成功する。

 しかし不運なことに、同じタイミングに後続バトルでダメージを受けた1台がダブルイエローの対象となっていたことから、先頭のレンツはスローダウンの判断を見せており、キスは「イエロー掲出下でリードを取り戻した」と判断され、審議の結果レースタイムに5秒加算のペナルティが科されることに。

自身3度目のタイトルを獲得したハンガリー出身ノルベルト・キス(Révész Racing/MAN)
前戦でキャリア初勝利を挙げたテオ・カルヴェ(BUGGYRA Racing/FREIGHTLINER)がレース2で殊勲の2位表彰台に

■レース2ではフロントロウ発進のテオ・カルヴェが躍動

 これで残るラップを3番手ハーンとのタイムギャップ構築に集中したキスは、クリーンエアのアドバンテージも活かして2番手レンツと約2秒、3番手ハーンとは約7秒のマージンを築いて12周のチェッカー。最終的に1ポジションダウンに留まったキスが数字上1点差でレンツの手の届かない領域に到達し、週末3ヒートを残してチャンピオンシップタイトルを獲得する結末となった。

 タイトル決定後のリバースグリッド戦となったレース2は、後方から迫るハーン、キス、レンツ、そしてラッコらの強豪を抑え、前戦でキャリア初勝利を挙げたフロントロウ発進のテオ・カルヴェ(バギラ・レーシング/フレイトライナー)が躍動。

 終始トップ10圏内が5秒差、各トレーラーヘッド間のギャップが0.5秒範囲という緊迫の接近戦が続くなか、カルヴェは7周目まで首位を守り抜く。さらにハーンにリードを奪われた後も新王者キス以下、レンツ、ラッコを抑えて2位フィニッシュを果たす大健闘をみせた。

 明けた日曜も、午前の予選とスーパーポールは新チャンピオンの独壇場となり、この日も2番手となったレンツに対し、コンマ5秒の大差をつける2分00秒985のフライングラップでシーズン10回目のポールポジションを手にする。そのままレース3はキスが“ライト・トゥ・フラッグ”での圧勝劇で年間11勝目を挙げ、2位ハーン、3位アントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)の表彰台となった。

 そして迎えた2021年最終ヒートは、繰り上がりのリバースポールを手にしたシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)と、レネ・ラインアート(レイナート・レーシング/イベコ)の“元師弟コンビ“がフロントロウから発進すると、4番手から出たレンツがターン3までにイベコ軍団を仕留めて、そのまま10秒以上もマージンを築いていく。

 しかし残り1周の時点で12番手を走行中だったアリーヤ・コロック(バギラ・レーシング/フレイトライナー)がターボトラブルに見舞われ大量の白煙を上げストップしたことで、レースディレクターは赤旗中断とともにレース終了を宣言。レンツが意地の最終ヒート勝利を達成し、2位ハルム、3位ラインアートとポディウム登壇者全員がドイツ人ドライバーのフィナーレとなった。

日曜も午前の予選とスーパーポール、そしてレース3は新チャンピオンの独壇場に
赤旗で短縮決戦となったレース4は、サッシャ・レンツ(SL Trucksport 30/MAN)以下ドイツ人が占拠する結果となった

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