【動画】絶景を求めて 蛤浜海水浴場(新上五島町)

蛤浜海水浴場(新上五島町)

 夏の間、遠浅の浜辺は延べ約1万3千人の観光客らでにぎわう。7月上旬、現地を訪れると、まだ人影はまばら。穏やかな時間が流れていた。
 五島列島の北部、長崎県新上五島町の中通島(なかどおりじま)にある有川地区七目(ななめ)郷。砂浜の延長は東西約500メートル。エメラルドグリーンの海と白砂のコントラストが美しい。干潮時は、砂浜がぐんぐん広がり、波打ち際までの距離は約200メートルにも及ぶ。2006年、環境省「快水浴場百選」に認定され、透明度や衛生面はお墨付き。入江に囲まれているため、波が立ちにくく、初心者も遊びやすい。
 道土井(みちどい)郷でダイビングショップを経営する今田哲也さん(44)によると、遠浅のため蛤浜は潜水には向かないが、上五島の海には約30カ所もダイビングスポットがあるらしい。「風向きによっていろんな場所を選べ、初心者から熟練者まで誰もが楽しめるのが上五島の海。潮の入れ替わりも多いので水がきれいで、サンゴや南方系のカラフルなタカサゴなど多くの生き物がいる」と胸を張る。
 有川郷で観光客らを対象に、スタンドアップパドルボード(SUP)体験など海遊びを企画する上五島サーフクラブの永井響(きょう)代表(53)は「こんなにきれいな海水浴場はなかなかない。北海道から沖縄までリピーターがいて、海外から来る人もいる」と話す。
 両親の代から蛤浜近くに暮らすのは立石ミサヲさん(93)。親が子どもの頃から夏はにぎわっていたと聞いており、少なくとも明治時代には島民が海遊びを楽しむ場だったようだ。「今も浜の景色を見にいく。毎日でも飽きないほど美しい」とやっぱり誇らしげ。
 近くの亀谷謙一郎さん(73)は、午前5時ごろから約1時間の清掃を兼ねた散歩が日課だ。「日が昇り始めるころの景色は値千金。生きる喜びを感じる」。みんな蛤浜が大好きなのだ。
 夕方、家族連れが波打ち際で楽しそうに遊んでいる。薄い雲の切れ間から陽光が差し、海面をキラキラと照らし始めた。上五島ならではの景観が雄大に変化していく。しばし見とれた。

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