【大学野球】燕ドラ1法大・山下輝が投じた“魂の17球” 9回無死満塁、危機救った緊急登板

明大2回戦に登板した法大・山下輝【写真:宮脇広久】

加藤監督は「指示していない」のに、ブルペンから「準備ができました」

東京大学秋季リーグ戦は26日、明治神宮球場で1試合が行われ、法大と明大が4-4で引き分けた。11日の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」でヤクルトから1位指名を受けた法大の左腕、山下輝投手(4年)が1点リードの9回無死満塁という絶体絶命のピンチで急きょマウンドに上がり、チームを救った。

「山下は明日先発させるつもりだったので、最後まで使いたくなかった」。法大の加藤重雄監督は試合後、そう打ち明けた。

4-2と2点リードして9回を迎えたが、2番手の古屋敷匠眞投手(4年)は先頭の宗山に中前打、続く直井に四球を許し、無死一、二塁。ここで左腕の尾崎完太投手(2年)を登板させるも、1球もストライクが入らないまま、蓑尾に四球、続く代打・明新には押し出し四球を与えた。リードはわずか1点となり、無死満塁の大ピンチ。続く丸山へのカウントが1-1となったところで、加藤監督はベンチを飛び出し、山下にスイッチした。

「私は他の投手で最後まで行くつもりで、全然指示はしていなかったのですが、ブルペンから『山下の準備ができました』と連絡が入ったのです。そこで決意しました」と指揮官は明かした。

山下は試合中盤に1度肩をつくったが、それはあくまで翌日の先発に備えたもの。しかし9回、徐々に追い込まれるチームを見て、居ても立ってもいられず、自ら投球練習を始めたのだった。「4年生で勝ちたい、これは行くしかない」という思いがあふれての行動だった。

燕ドラ2丸山との対戦も「打者はあまり見えていなくて…」

カウント1-1から相対した丸山はヤクルトからドラフト2位指名されており、来年はチームメートとなる可能性が高い。しかし、山下はこの場面ばかりは「打者はあまり見えていなくて、ストライクゾーンだけが見えていました」と述懐する。

丸山にはカウントを2-1とした後、内角低めの146キロ速球を打たせ、一ゴロに仕留めて三塁走者を本塁封殺。陶山も同様に一ゴロに打ち取り、2死まで漕ぎつけた。続く村松の打球も平凡な二ゴロだったが、二塁手の齊藤大輝内野手(3年)がファンブルし同点。それでも山下は、続く4番・上田から137キロのツーシームで空振り三振を奪い、敗戦危機から脱した。

奇跡的な“山下様様”の展開。味わい深い17球だった。一方で、加藤監督の采配も光った。この回無死一、二塁となった時点で、一塁手を浦和博外野手(2年)から松田憲之朗内野手(3年)に代えていたのだ。浦は今季、打撃が急成長し4番を任されるまでになったが、一塁守備は急造だった。「不安を解消した方がいいと思いました」と加藤監督。この後、絶体絶命の場面で松田へ一ゴロが2本飛び、本塁送球無難にをこなしたことを考えると、加藤監督のひらめきも勝因の1つと言えるだろう。

法大はこの引き分けで1勝3敗5分けとなり、今季5位が確定。だが、同時に明大の優勝の可能性を消滅させ、意地を見せた。残るは27日の明大戦のみ。山下は勝利へ執念を燃やすその姿を、後輩たちに残していく。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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