諫干訴訟 進行協議打ち切り 双方の認識交わらず 開門派反発 国「開門せず基金が最良」

上から開門派集会で「体が続くまで闘う」と述べる松本さん(左、写真上)、会見で非開門の立場をあらためて示す農水省の担当者(写真下)=福岡市内

 国営諫早湾干拓事業を巡る請求異議訴訟差し戻し審で、開門派が「解決に向けた最後のチャンス」と位置付けていた前提条件なしの協議は、実質的な話し合いに入らないまま打ち切りとなった。開門派は「国民に対しても不誠実」と反発。一方、国は開門せず、有明海再生の基金による解決が最良との考えを重ねて示した。
 「本件請求を統一的、総合的かつ抜本的に解決するためには、話し合いのほかに方法はない」「国民の利害調整を総合的・発展的観点から行う広い権能と職責を有する国の、これまで以上の尽力が不可欠」-。福岡高裁が4月に書面で示した「和解協議に関する考え方」は、事態打開への強い姿勢がにじんでいた。開門、非開門のいずれも前提条件にしなかったのも、両者をまずは話し合いのテーブルに着かせたいとの意図が透けて見えた。
 だが、開門せず、有明海再生に向けた基金で和解を目指すことが「最良の方策」と主張する国は、あくまでも非開門が前提でなければ協議を進めることができないとの姿勢を固持。今月、所轄の農林水産相に就任した長崎県選出の金子原二郎参院議員も、国の従来の見解を踏襲している。
 「開門確定判決を国は守らないといけない。それを守らないのは権利の乱用だ」。進行協議後の開門派集会で、馬奈木昭雄弁護団長は批判のトーンを強め、「判決はわれわれが勝つに決まっている」と語気を強めた。開門確定判決の原告で島原市の漁業、松本正明さん(69)は「国は全くやる気がないということが分かった。この闘いに勝ち抜くまで頑張っていきたい」と訴えた。
 一方、農水省の担当者は会見で、今後も有明海再生に向け開門確定判決の原告を含め関係者の意見を聞いていくとしたが、それは「非開門が前提」と強調。結審する見通しについては「(これまでの審理で)必要な主張、立証は尽くした」とした。同高裁が「考え方」を示した後のこれまでの進行協議について開門派が和解協議だったと受け止めていることに対し、担当者は「あくまで進行協議であり和解協議は始まっていない」と述べるなど、双方の認識は交わらないままだった。

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