引退したアーンハートJr.とボウヤーがNASCARの“Next-Gen”車両を初体験「ブレーキングは別次元」

 NASCAR最高峰のカップ・シリーズで長年にわたり活躍を演じた伝説のドライバー、デイル・アーンハートJr.とクリント・ボウヤーが、10月最終週の火曜日にひさびさのドライビングを堪能。2022年よりNASCAR導入が予定される次世代車両“Next-Gen”シボレー・カマロZL1のステアリングを握り、あわせて70周程度のラップを完了した。ともに「グリップレベルと、ブレーキングパワーには強く感銘を受けた」と、そのファースト・インプレッションを語っている。

 この豪華なふたりによるテストは、トニー・スチュワートによる数時間のグッドイヤー・タイヤテストを終えたのちに実施され、2022年2月6日に開催予定のNASCARエキシビジョン向けに建設されたノースカロライナ州ボウマングレイ・スタジアム内の特設ショートトラックで行われた。

 2017年限りで現役を退いたアーンハートJr.はNBCに、そして昨季限りでスチュワート・ハース・レーシングのシートを離れ、現在はFoxの放送席に座るボウヤーは、通称“Gen7”と呼ばれた新型車両が来季のNASCARカップ・シリーズにデビューするのに備え「ブースで実況する際の下準備」としてドライブが実現した。

 その次世代車両Next-Genでは、当初予定されたカーボンモノコックではなく引き続き鋼管スペースフレームが採用されるものの、6速シーケンシャルギヤボックス、独立懸架のリヤサスペンション、5穴の15インチから18インチへと大径化したセンターロックホイール、そして“サイドフォース”削減と同時に空力性能大幅アップを狙う新型サイドスカートとリヤディフューザーなど、NASCAR史上初採用の新規軸が多数盛り込まれている。

 計画より1年遅れの2022年導入で製作が進む新型を初体感した“ジュニア”は、そのキャラクターを「すべて感じ取ることを心から切望していた」と語った。

「もうすでに彼らには、さらに複数回のテストを実現してもらうように頼んだよ(笑)。次の放送で良い情報提供ができることを唯一の目的として新型車のステアリングを握り、マシンの中でもっと時間をかけて理解を深めたいと思っているんだ」と続けたアーンハートJr.。

「この新型は、僕がNASCARで経験したどのクルマよりも明らかに優れている。とくにブレーキング性能は僕にとってもっとも印象的な部分だった。慣れるのに一番時間を要したパートで、いつもの感覚で踏むと止まりすぎるぐらいだ。コーナーに入る前にスピードを殺しすぎてしまったよ」

「そしてタイヤの大径化によるグリップ向上も顕著だ。このタイヤならより速いコーナーリングが可能になるし、これまで感じたことのない……あまり馴染みのないフィーリングだったよ。でも大きな違和感はないし、すべてがストックカーそのものであるのは間違いないね」

2022年導入予定の”Next-Gen”車両には、6速シーケンシャルギヤボックス、独立懸架のリヤサスペンション、18インチセンターロック、そしてリヤディフューザーなど多数の新規軸が盛り込まれる
「とくにブレーキング性能は僕にとってもっとも印象的な部分だった」と語るデイル・アーンハートJr.

■4速Hパターンから6速シーケンシャルへの変更に「慣れようとガチャガチャ練習してみたよ(笑)」とボウヤー

 一方、この日最後にステアリングを握ったボウヤーも、この体験を「素晴らしい」と賞賛し、テストへ招待されたことへの感謝の言葉を述べた。

「デイルも僕も、この新型の話題に触れる際には実際のマシンを体感しておく必要があると感じていた。その結果は非常に感動的だったよ。グリップレベル、ブレーキングパワーの双方に深く感銘を受けた。ここボウマングレイに来られて本当に良かった」と、昨季までフォード・マスタングをドライブしたボウヤー。

「シフトも僕らが慣れ親しんだものとはまるで違うし、4速Hパターンから6速のシーケンシャルになった。これに慣れようとガチャガチャ練習してみたよ(笑)。それにブレーキングは不意を突かれるほど驚異的だ。コンポーネントそのものの性能もあるが、サスペンションやタイヤのキャパシティ向上も寄与しているね。週末にラバーインが進めば、現在よりさらにグリップが増すだろう」と総括したボウヤー。

 今回のテストは特設トラックということもありウルトラ・ショートオーバルの様相を呈していたが、それに関してアーンハートJr.は「現行車両でここを走っても、それほど楽しい体験にはならないだろう」と語り、Gen7は従来とは完全に別次元のパフォーマンスを備えていることを改めて強調した。

「もし現行規定のクルマでここを走れば、タイヤが小さすぎてコーナーでもブレーキングが鈍いだろうね。左フロントタイヤを引きずってすぐにフラットスポットを作ることになるだろうし、リヤタイヤは鳴きっぱなしさ」とジュニア。

「でもこのクルマは、僕が懸念したそういうポイントをことごとくこなせる実力がある。この小さな小さなトラックで機能するなら、シリーズのどのトラックでも大丈夫だと思う。これは従来とはまったく異なる“ビースト”だね!」

シボレー・カマロZL1に加え、フォード・マスタング、トヨタ・カムリとお馴染みのモデルも“Gen7”へと移行する
「ブレーキングは不意を突かれるほど驚異的」と語ったクリント・ボウヤー

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