井上尚弥が約2年ぶり国内でタイトル戦 元世界王者が語る “格下” 相手の「危険度」

12月の防衛戦が決まった井上尚弥(代表撮影)

〝モンスター〟は雑念を振り払えるか。WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥(28=大橋)がIBF同級6位アラン・ディパエン(30=タイ)を相手にWBAは6度目、IBFは4度目の防衛戦(12月14日、東京・両国国技館)を迎えることが正式に決まった。本来は年内の統一戦を青写真に描きながら格下との対戦となった井上に対して、元世界王者の先輩が激励とともに注意点を指摘。その意外な落とし穴とは?

井上にとって日本での試合は2019年11月のワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)決勝(さいたまスーパーアリーナ)で、現WBC世界バンタム王者のノニト・ドネア(フィリピン)と激闘を繰り広げて以来。約2年1か月ぶりとなる国内開催に「うれしい。日本のファンの前でやれることにすごく気合が入っている」と闘志をみなぎらせた。

ただ、同級4団体統一を目標とする中で、当初は年内にドネア、WBO同級王者のジョンリール・カシメロ(フィリピン)のどちらかと統一戦の青写真があった。しかし、両者はそれぞれの団体から指名試合の指令が出され実現ならず。それだけにタイの強豪とはいえ、今回の対戦相手にはファンからも落胆交じりの声が上がっているのも事実だ。

所属ジムの大橋秀行会長は来年4月に国内でビッグマッチ開催との計画を明かし、井上も「来年の春に統一戦(の可能性)があるとのことなので、それに向けてのモチベーションがある」と士気を高めるが、ビッグマッチから一転して格下とみられる相手に闘志を引き起こせるのか。

大橋ジムの世界王者第1号で元WBC世界スーパーフライ級王者の川嶋勝重氏は「確かにモチベーションが下がる部分はあるかもしれない。そういう中で試合に入り、不用意なパンチをもらって負ける選手というのはこれまで何人もいたのも事実。雑にならないこと。圧倒的な姿を期待されて、雑になって早い回に倒しにいってカウンターをもらう恐れもある。やっぱり要は気持ちなんですよ」と指摘。リングで無双を続ける〝モンスター〟でも、格下相手では意外な「落とし穴」も存在するという。

もちろん「尚弥に限っては大丈夫でしょう」と強調。川嶋氏は現役時代に不屈の闘志を見せたが、実は早期KOを狙える状況でも「お客さんを楽しませようとあえて(KOを狙いに)いかなかったこともあった。でも、尚弥のこれまでの試合を見ても、まったく油断なく早い回で倒してきましたからね。デビューから周りのプレッシャーの中で戦ってきているし、簡単に気を抜いたりするタイプじゃない」。井上には、落とし穴にはまらず豪快なKO勝利を期待した。

来春のビッグマッチへモンスターが真価を発揮する。

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