ABBA(アバ)「Does Your Mother Know」解説:珍しくビョルンがリード・ヴォーカルで歌った曲

多くの人にとっては、アグネタ・フォルツコグの水晶のようにクリアなボーカルとフリーダ・リングスタッドの暖かいボーカルのミックスがABBA(アバ)のトレードマークだ。その点から言うと「Does Your Mother Know」はビョルン・ウルヴァースがリード・ヴォーカルを取ったという珍しい瞬間を捉えた、ちょっとした変わり種の楽曲と言える。

1979年4月27日にアルバム『Voulez-Vous(ヴーレ・ヴー)』の2枚目のシングルとしてリリースされたこの曲は、すでに確立された勝利の方程式に実験を試みるABBAというバンドの自信を物語っている。そして、その数年後にそれぞれのメンバーをソロ活動に駆り立てていくほどの、一時も休まないグループとしての創造性が明らかになった曲といえるかもしれない。

初期のレコーディング・セッション

最初の頃「I Can Do It(私にはできる)」というタイトルだった「Does Your Mother Know」は1979年2月のポーラー・ミュージック・スタジオでのセッションの際に生まれた。この曲は最初から一貫してポップというよりはロックな曲で、デモ・バージョンのビョルンのガイド・ボーカルがぴったり合っていたので、そのまま彼のヴォーカルで行くことになったのだ。

ドラムスとベース、ピアノ、エレキギターの構成は、5年前にユーロビジョンで本格的なキャリアをスタートしたグラム・ポップなサウンドを思わせる弾けるようなエネルギーを曲に与えている。唯一アグネタとフリーダのバック・コーラスがこの曲を従来のアバ・サウンドらしくしていて、その後スタジオ・セッションでサックスのパートが録音されたりしたが、ベニーとビョルンはこの曲の要素は比較的早い段階で出来上がっていたと振り返っている。

いろんな意味に解釈される歌詞ということもあり(当初の男性からの視点は、何年も後のミュージカルと映画バージョンの『マンマ・ミーア!』では見事に逆転されていたが)、ビョルンはずっとこの曲でのリードの役割については居心地の悪さを感じていたようで、「彼女たちのどちらかが歌うべきだったよ。すごくいい曲なんだからその方が最大限の良さが発揮できたのに」と後に彼は言っている。

チャートの成績

この曲は広く高い評価を受け、ドイツでは1位、イギリスでは4位を記録するなど世界中のヒットチャートを駆け上り、アメリカでもトップ20にランクインした。他のABBAの曲と異なり、「Does Your Mother Know」はそれほど多くのカバー・バージョンを産まなかったが、アルバム『Voulez-Vous』に収録され、彼らが最も多作だった時期にリリースされたことで、彼らの最も人気のある曲の一つとなったのだ。

Written By Mark Elliott

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