ABBA「チキチータ」解説:当初は「ロザリータの腕の中に」というタイトルだった名曲

熱心なABBA(アバ)ファンならその名前を知っているかもしれないが、ポップ通だからといって誰もが「ロザリータ」というキャラクターとABBAとの関係を知っているわけではない。しかしこれは、アルバム『Voulez-Vous』のリリースのきっかけになり、1979年1月16日にABBAが「Chiquitita(チキチータ)」としてリリースした曲にまつわる物語に関係があるのだ。

曲作りとレコーディング・セッション

ABBAのベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースの作によるこの曲には、完成までにいくつかの仮題が付けられていて、中でも重要なのは「ロザリータの腕の中に(In The Arms Of Rosalita)」というものだ。

しかしそのフレーズはメロディーの韻律にはぴったり合っていたが、グループがこのタイトルに沿ってオリジナルの歌詞によるバージョンをレコーディングしたところ、何かがしっくりと来なかった。彼らはこの曲を何度もやり直し、オリジナルの歌詞の一部を残しながらタイトルを「Chiquitita」(スペイン語で「小さい少女」という意味)としたのだった。

ポーラー・ミュージック・スタジオで1978年の終わりに完成したこの曲は、ほどなくアルバム『Voulez-Vous(ヴーレ・ヴー)』からの第1弾シングルの第1候補となった。アグネタ・フォルツコグの繊細なリード・ボーカルのこの曲は、よりアップビートで、第2弾シングルとなった「Does Your Mother Know」よりは遥かに望ましいと思われたからだ。その判断が正しかったことは「Chiquitita」がベルギー、フィンランド、アイルランド、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ローデシア、南アフリカそしてスイスのヒットチャートの1位を獲得する大ヒットとなったことで証明された。

リリースとファンの反応

イギリスでは、ABBAはそれまでに7曲のナンバーワン・シングルを記録していたが、直近ではその水準に達しないリリースが続いていた。「Chiquitita」はもう一息で1位だったが、ブロンディのナンバーワンヒット「Heart Of Glass」の下で2週連続で2位を記録。そしてだいたいにおいてABBAのシングルの成績がやや一貫性を欠くアメリカにおいては、29位にとどまった。

ABBAがリリースの一週間前の1月9日に、ビー・ジーズやロッド・スチュアート、ドナ・サマー他多くのスター達が参加した、ミュージック・フォー・ユニセフのチャリティ・コンサートでこの曲を演奏したことにより、この曲は全世界に対して盛大にお披露目された。そしてABBAはこのシングルの全てのロイヤリティの半分をユニセフに寄付したのだった。

スペイン語バージョン

ABBAはこの曲のスペイン語バージョンもレコーディングし、アルゼンチンだけでも50万枚の売上を記録した。そのバージョンは、マルチ・プラチナ・アルバムとなったベスト盤『ABBA Gold』のスペイン語バージョン『Oro: Grandes Éxitos』に収録されていてる。

Written By Paul Sexton

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