パラアスリートも魅了した「新庄劇場」 今も忘れないオープン戦でのパフォーマンスとは

札幌ドームでバイクを乗り回す日本ハム・新庄(2006年=東スポWeb)

これがスターの存在感だ。プロ野球・日本ハムは10月29日、新庄剛志監督(49)の就任を正式に発表した。固定概念にとらわれない斬新なスタイルで世の注目を集めた現役時代。数々の不可能を可能に変えてきた男の雄姿は、パラアスリートにも大きな刺激を与えていた。

新庄監督は2004年に米大リーグ・メッツから日本ハムに移籍すると「これからはメジャーでもないです。セ・リーグでもないです。パ・リーグです」「札幌ドームを満員にします」などと高らかに宣言。プレーはもちろん、バイク入場ショー等のパフォーマンスで球場を沸かせ、東京から北海道へ移転したばかりチームを人気球団に変貌させた。

東京パラリンピックアーチェリー男子代表の上山友裕(34=三菱電機)は、当時の新庄監督の輝きぶりを今でも覚えている。

「新庄さんは札幌ドームを満員にするって言って(当時)全然人気のない日本ハムの(本拠地)札幌ドームを満員にした。新庄監督が目指すところだなと思った」

どうやったらパラアーチェリーを盛り上げることができるのか――。新庄監督を参考に、上山はファン限定の「オンライン飲み会」を開催するなど、斬新なアイデアでファンサービスを行ってきた。

もう1つ、上山がファンサービスに力を入れる理由がある。「新庄さんは本当にファンを大切にしている」。04年の春、オープン戦で新庄監督を見るために、大阪ドーム(現京セラドーム)へ足を運んだときのことだった。「練習中からファンを魅了させるように、手を抜かなかったのが印象的だった。キャッチボールでも他の外野手は放物線を描いているのに、新庄選手は真っすぐなんですよ、ボールが。センターの上の方からずっと見ていたんですけど、すごいなと」。常にファンのことを第一に考える新庄の振る舞いに感動を覚えたという。

さらに、キャッチボール後にはそのボールをスタンドに投げ入れた。「僕の右に飛んできたボールは、その横にいた方に捕られてしまった(笑い)。でも、練習のときから気を抜かずにファンが面白いと思うことをやり続けた結果、札幌ドームを満員にした。僕もそういう選手を目指したい」。あの日の新庄監督の姿は、今の上山の礎となっている。

多くのファンをとりこにしてきた〝新庄劇場〟。次は指揮官として、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか――。楽しみは募るばかりだ。

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