争点と焦点

 新人記者の頃は頭でごっちゃになっていた。選挙の「争点」と「焦点」という似て非なる言葉がある。簡単に言うと、争点はある問題や政策で争うポイント、焦点は関心が集まるポイントを指す▲終わったばかりの衆院選で言えば、争点は新型コロナ対策や経済再生などで、主な焦点は発足から間もない岸田政権が信任されるかどうか-だった▲感染は小康状態で、この先のコロナ対応について激論が交わされたとは思えない。経済でも「成長と分配」を巡る主張はどれも漠然としていた▲争点はぼやけたが、政権を選ぶという焦点もまた、結果を見ればかすんでしまう。自民党は議席を減らしたものの政権を安定して保てる数を手にし、野党の第1党、立憲民主党は後退した。長崎3区、4区がそうだが、選挙区で立民が自民に迫りはしても、固い組織、支持層を突き崩すのは至難の業だった▲立民、共産党など毛色の異なる野党の協力が、なりふり構わない“奥の手”にも映り、政権を託すのは…とためらわせたともみられる。「自民1強」の緩みへの批判票は日本維新の会に流れたらしい▲焦点ならば常にある。きのうは選挙直後では例のない、自民幹事長の後任選びが注目された。この先の焦点は、おごらず、緊張感たっぷりの政権運営をおいてほかにあるまい。(徹)

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