衆院選ながさき2021・上 自民大苦戦 早くも“後継論議”

当選を確実にし、朝長市長の祝辞を聞く北村氏(左)=1日午前1時58分、佐世保市内

 日付が1日に変わるころ、長崎4区で8選を目指す自民前職、北村誠吾(74)の支持者は長崎県佐世保市内のホールで開票結果を待っていた。立憲民主新人の末次精一(58)に対し、他市町で3105票差を確定させていたが、無党派層が多い大票田の同市の劣勢を挽回するには心もとない。開票所からの情報で一時、末次が3千票抜け出した。「万事休すか」。諦めムードが広がる中、差が2500票程度に縮まったと情報が入った。選対幹部は電卓をたたき、391票差で勝ち抜けるとはじいた。「まるで市議選だ」
 北村には1年前から逆風が吹いていた。地方創生担当相時の不安定な国会答弁や失言を理由に、地元で公認候補としての資質に疑問の声が噴出。西海市区選出の県議、瀬川光之(59)の公認を求める動きも広がった。だが自民県連関係者によると、北村は「瀬川らによる政治的な攻撃」と受け止めているようだった。
 解散前の党の情勢調査では瀬川、末次を含めた3人のうち最下位。選挙戦突入後の調査でも佐世保市で末次に大負けしていた。保守地盤の足元で有権者離れが確実に進んでいた。
 農相の金子原二郎や佐世保市長の朝長則男、県市議らが必死に巻き返し、まさに薄氷の勝利。だがそれは無党派層が結果を左右する近年の選挙において、組織戦の限界を露呈する格好にもなった。ある市議は言う。「自民にも立民にも風は吹いていない。北村にだけ逆風が吹いた。本当につらい戦いだった」
 3区でも自民前職、谷川弥一(80)が大苦戦。「落選したと思った。一つは高齢批判。もう一つは野党共闘が想像以上だった」。約2千票差で勝利した谷川は報道陣にそう答えた。谷川もやはり無党派層が多い大村市で立民新人の山田勝彦(42)に6千票以上の差をつけられたが、自民支持層が多い離島で挽回。「大村などで厳しい批判を受けた。次の世代に向けていろいろ考えんばいかん」と後継探しに言及した。
 北村も「最後の戦い」と明言。既に後継として、公認争いで北村側に立った県議の山下博史(46)や、金子の長男の名前が取り沙汰されている。今回公認から漏れた瀬川もあきらめていない。
 一方、谷川の3区は単に後継を探せばよいという状況にない。今後、県内選挙区は区割り変更で4から3に減る見通しで、3区と2区(諫早市、島原半島など)は一定ひとつの選挙区になると想定される。2区には初当選した自民新人の加藤竜祥(41)がおり、いずれ3区側と公認一本化の調整に直面する。
 谷川の後援会幹部は言う。「負けていたら、加藤がそのまま合区で公認される恐れがあったので、票差は別として勝って良かった」 =敬称略=

© 株式会社長崎新聞社