文政権がTPP加盟でジレンマに...加盟すれば農業壊滅や政権批判恐れ、加盟しないと貿易減少の恐れ

韓国政府が、日本が主導するCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)加盟を巡り、判断を相次ぎ先延ばししている。国内での反対意見や、次期大統領選挙、対日外交なども絡み、悩みを深めているようだ。

参考記事:韓国政府の対日通商官らが相次ぎ退職か 「政権の無理な要求に懐疑を育んだ」韓国紙

韓国政府は当初、先月25日に経済大臣会議を開いてCPTPPの加盟申請を決定する予定であることが有力視されたいたが、結局は判断が先送りされた。ホン・ナムギ経済副首相は「今は時間がない」「決定は10月末か11月初めに出すべき」であると述べていた。しかし、11月になっても、決定の気配がない状況だ。11月1日に開かれる予定だった経済大臣会議も開かれなかった。

CPTPPの発足当初、韓国はこれに距離を置いていたが、米国の復帰が有力視され、中国と台湾の加盟申請がなされた後は、「船に乗り遅れるな」とばかり、加盟への比重が高まった。韓国の経済省庁や主要メディアも軒並み加盟賛成の姿勢をみせた。

しかし、逆に、農業民団体や農業系メディアは反対の姿勢を強めた。CPTPPは市場開放の要求水準が高く、CPTPP加盟国には豪州やカナダ、メキシコやニュージーランドなどの農産物の有力輸出国が首をそろえており、韓国農業が崩壊するという懸念が強まっている。農業紙などは文政権が韓国の農民に無視していると批判する向きもある。

image

朝鮮日報は1日、CPTPP加盟について韓国政府が判断を先送りする理由について分析し、政府内で意見が割れているとの見方を示した。経済省庁や外交部などがすでにCPTPP加盟が必要であるとの意見を公開的に示したのに対して、「しかし、農林畜産食品部と海洋水産部は農漁民を懸念して慎重な立場である」とし、農業団体やメディアの反対姿勢に加え、CPTPP加盟の交渉次第では漁業団体などへの免税措置なども減らす必要が生じるため、慎重な姿勢にならざるを得ないと伝えた。

また、次期大統領選挙を来年3月に控え、「農民世論を刺激する必要がない」という声があり、加盟申請をしても実質的な交渉役になる次期韓国政権が、CPTPPへの加盟申請を行った現政権(文政権)が「外交的過失」を侵したと追及される可能性に現政権が難色を示しているとの見方も朝鮮日報は伝えた。同紙は「例えば日本が交渉過程で《福島産水産物を輸入再開せよ》と要求したらどうするかのということ」であると指摘した。

同紙は「政府は依然としてCPTPP加盟申請をするという方に比重をかけている」としつつ、「CPTPP加盟交渉中の英国の事例を参照して、交渉戦略をより細かく組む」との見方を示した。

韓国産業省によると、デボラ・エルムズ=シンガポールアジア貿易センター代表は25日、「韓国が早い時期にCPTPPに加盟意思を表明しなければならず、加盟意思表明が遅れるほど損害が大きいだろう」と、韓国政府主催の懇親会で発言している。CPTPPのキャパが広がるに連れ未加盟の韓国の貿易量が他国に転換される可能性や、加盟申請が遅れるほどに交渉のハードルが高まることを指したとみられる。

参考記事:韓国紙「日本が韓国のTPP加盟を断れば自滅」「議長国変更と中国申請タイミングを狙った」

参考記事:韓国農業紙「TPP加盟は韓国農家に莫大な打撃」「後発加盟国は強力な市場解放要求される」 経済紙は加盟支持

参考記事:韓国紙「日本は韓国TPP加盟の条件に福島水産品の輸入を迫る」「WTO半導体訴訟は一歩も進まず」

© 合同会社WTS研究所