韓国紙「日本は韓国TPP加盟の条件に福島水産品の輸入を迫る」「WTO半導体訴訟は一歩も進まず」

半導体品目の輸出規制(輸出管理強化)などで日本をWTO(世界貿易機関)に訴えている韓国だが、WTOの機能不全やTPP加盟をめぐる駆け引きなどで、「優位」とはいえない立場にあるようだ。

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ヘラルド経済は7日、CPTPP(環太平洋経済連携協定)議長国である日本が韓国の加盟条件に福島水産物輸入規制の撤廃を要求するだろうとの声が専門家の間で出ていると伝えた。

韓国政府は現在、WTOで日本を相手に半導体輸出規制の件で訴えている。しかし、WTOで紛争解決のためのパネルが設置されてから1年2カ月が経つものの、「関連訴訟手続きが一歩も進んでいない」とし、「膠着した」状態であると同紙は指摘した。

通常、WTOのパネル紛争1審は、パネル設置から最終判定まで原則10~13カ月を要するが、すでに14カ月が経つ理由は、トランプ政権時に米が上訴機構(2審)任命を拒否したためパネルの機能そのものが停止したことによる。多元主義を重視するバイデン政権はWTOへのコミットメントを強めるとみられていたが、いまだパネルは始動していない。

一方で日本政府は、韓国側の造船産業支援についてWTOに訴えている。これは2018年11月に韓国の金融機関などが経営難の大宇造船海洋の支援したことについて、日本は、「補助金の規定に違反し、市場を歪ませる」として提訴していた。ただし、これについては「日本も造船業支援策を模索している」ため、そのうち取り下げられるのではないかとの見方を同紙は伝えている。

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代わりに、日本政府は、CPTPPへの韓国の加盟を条件に、懸案となっている福島周辺水産物の輸入規制を撤廃することを迫るとの見方を同紙は示す。先に韓国は2019年4月にWTOの最終審において、日本の福島周辺産水産物の輸入禁止措置をめぐる紛争で日本側に逆転勝訴している。これにより、福島県など8つの県で取れた水産品の輸入禁止措置が韓国で維持されている。

同紙は、「CPTPP議長国である日本が自国の水産物輸入撤廃の条件で加盟を承認してくれる可能性が高い」とし、中国にもそのように交渉する可能性に触れた。

ただし、この場合、半導体輸出規制については依然として日韓間の課題として残ることになる。ヘラルド経済はこの事に触れていないが、他の韓国メディアなどでは、日本政府が国際法違反と批判する徴用工問題において、日本企業への補償命令が何らかの形で回避されない限り、外交交渉での解決は難しいとの見方が多い。その場合は、いつ開始されるか分からないWTOパネルでの審査を韓国側は待つことになる。

輸出規制がされているとはいえ、韓国側にフォトレジストなどの供給が遮断されたわけではないため、韓国の半導体産業に今のところ実害は無い。しかし、韓国の基幹産業である半導体産業において、「急所」となる部分を日本側に握られ続けることは避けたいというのが韓国政府や産業界の本音だ。

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