全国の女性社長が初めて50万人を突破 第10回「全国女性社長」調査

 全国の女性社長は54万919人で、調査を開始以来、初めて50万人を超えた。前回調査(2019年)の47万8,619人から13.0%増加した。全企業に占める割合は14.2%(前回13.6%)で、産業別では飲食業などを含む「サービス業他」が47.1%と5割に迫る。
 出身大学は、日本大学が10回連続トップ。2位慶應義塾大学、3位東京女子医大と続き、明治大学が11位から9位に上がった。10位内の国公立大学では東京大学が唯一、8位でランクインした。
 女性社長の増加は、多様な消費者ニーズの深掘りや「後継者難」の緩和など、幅広い課題の解消にも期待される。女性社長の視点から商品開発や市場開発を促し、経済活動の活性化への寄与も見込まれる。女性の社会進出に立ちはだかる育児や介護など生活面の支援に加え、社会全体の意識改革を進めるため、女性の社会進出を加速させる機運が高まっている。

  • ※本調査は、東京商工リサーチの保有する約400万社の経営者情報(個人企業を含む)から、女性社長(病院、生協などの理事長を含む)を抽出、分析した。調査は今回が10回目。

女性社長数の最多は東京都、「女性人口10万人当たり」でも東京都がトップを守る

 都道府県別の女性社長数は、最多は東京都の14万1,962人(前回12万3,351人)で調査を開始以来、10回連続トップを守った。次いで、大阪府5万2,249人、神奈川県3万4,457人、愛知県2万8,712人、福岡県2万3,745人と、企業数の多い大都市を中心に上位14位まで順位の変動はない。
 一方、少なかったのは、島根県1,592人、鳥取県1,982人、福井県2,082人、秋田県2,252人の順で、上位と同様に顔ぶれは変わらず、企業数や人口に比例した傾向をみせる。
 2020年実施の国勢調査の都道府県別人口に基づき、「女性人口10万人当たり」の女性社長数をみると、東京都が1,982人でトップ。次いで、沖縄県1,178人、大阪府1,134人、山梨県1,001人、福岡県877人の順となった。一方、最少は新潟県の420人。次いで、山形県426人、秋田県444人、島根県459人、富山県491人の順。経済規模が大きな大都市圏や、産業別女性社長数で最多を占める「サービス業他」が好調な地域で多い傾向がみられる。

女性社長率は初の14%超え

 企業数と女性社長数を対比した「女性社長率」の全国平均は14.2%で、前回(13.6%)に比べ0.6ポイント上昇した。調査を開始以来、10回連続で上昇している。都道府県別で、全国平均を上回ったのは12都府県。唯一、20%超の沖縄県が20.4%(前回20.6%)で、トップを維持した。次いで、東京都16.5%、福岡県16.1%、大分県16.0%、大阪府15.9%、山梨県15.2%の順。
 一方、女性社長のワースト1位は、前回と同じ新潟県で9.1%だった。次いで、山形県9.2%、福井県9.5%、富山県9.6%、石川県9.8%で、この5県が10%を割り込んだ。

女性社長

地区別 「女性社長率」トップは九州、近畿が2位に浮上

 地区別の「女性社長率」は、都道府県別で5位以内に3県(沖縄、福岡、大分)がランクインした九州が15.15%でトップ。次いで、前回2位の関東と3位の近畿が入れ替わり、2位が近畿15.11%、3位が関東14.9%の順。上位3地区が全国平均14.2%を上回った。
 4位以下の順位は変わらず、最下位の北陸は9.7%で唯一10%を割り込んだ。8位が東北11.4%、7位が中部12.6%、6位が北海道12.8%で、『西高東低』が続いている。

産業別 女性社長の約半数が「サービス業他」で活躍、不動産業は4社に1社が女性社長

 産業別の女性社長数は、「サービス業他」の25万4,856人(構成比47.1%)が最多で、過半数に迫る。飲食業や医療・福祉事業、美容関連など小資本での起業が可能で、資格を活かせる業種が背景にあるとみられる。次いで、不動産業の8万569人(同14.9%)、小売業6万433人(同11.2%)の順。
 産業別の「女性社長率」は、不動産業が24.1%でトップ。女性社長数1位のサービス業他(17.9%)を上回った。一方、建設業(5.3%)、農・林・漁・鉱業(7.9%)、運輸業(8.9%)、製造業(9.8%)の4産業で10%を割り込んだ。第1次産業や第2次産業への進出が広がっていない。

女性社長

女性社長の名前は「和子」が10回連続トップ

 女性社長の名前の1位は、「和子」が5,796人で10回連続トップ。以下、2位「幸子」5,300人、3位「洋子」5,203人、4位「裕子」4,368人までは前回と変わらず。 5位には前回7位の「陽子」3,757人が浮上した。トップの「和子」は、昭和初期から昭和27年(1952年)頃まで、女性の生まれ年別の名前ランキングトップだった影響を色濃く反映している。
 名前に「子」が付く社長は27万8,015人にのぼり、過半数(構成比51.3%)を占めた。逆に「子」が付かない名前では、18位の「明美」2,367人が最高。他には、26位「真由美」2,027人、27位「直美」2,006人、29位「由美」1,961人が30位以内に入った。

出身大学別 日本大学が10回連続でトップ、上位10校のうち9校を東京の大学が占める

 女性社長の出身大学は、日本大学が452人(前回420人)で10回連続のトップ。2位以下は慶応義塾大学372人、東京女子医科大学314人、早稲田大学300人、青山学院大学235人、日本女子大学191人、同志社大学175人、東京大学172人が続き、8位までは前回と変わらず。7位の同志社大学を除き、東京都に本部を置く大学が10位以内に9大学ランクインした。
 国公立大学では、東京大学が唯一、トップ10に入った。30位以内には、広島大学(16位、前回17位)、大阪大学(19位、同19位)、九州大学(19位、同23位)、東京医科歯科大学(24位、同24位)、神戸大学(28位、同39位)、千葉大学(29位、同35位)の7校が入った。
 また、上位30以内にランクインした女子大学は5校(前回5校)だった。

上場企業の女性社長は46人、前回より5人増加

 上場企業(東証1・2部、ジャスダック、地方市場、マザーズ)の女性社長(代表執行役を含む)は46社(判明分)だった。前回(41社)より5社増加したが、上場企業全体(3,887社)に占める女性社長の割合は、1.1%にとどまっている。
 証券業種別では、「情報・通信業」が12社で最多。美容業や介護サービス業などの「サービス業」が11社で迫り、飲食業を含む「小売業」6社が続く。

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