厳しいと思っていたチームタイトル獲得。TEAM IMPUL全力の逆転劇に星野監督も興奮「本当に参った!」【第7戦JAF鈴鹿GP決勝】

 鈴鹿サーキットで行われた2021年全日本スーパーフォーミュラ選手権の最終戦。注目のチームタイトル争いはcarenex TEAM IMPULに軍配が上がった。

 予選を終えた段階では、3番手と4番手につけたDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが優勢かと思われたが、いざレースが始まると、9番手からスタートした平川亮(carenex TEAM IMPUL)は序盤の5周で6ポジションアップの快進撃を披露。途中のピットストップを終えてからは、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)との一騎打ちとなったが、最後まで攻略は叶わず2位チェッカーとなった。

 同じく14番手からスタートした関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)はレース終盤までピットストップを引っ張る戦略を採った。

「レース前のウォームアップから調子は良かったのですが、序盤は抜いたり抜かれたりで、ペースは速いけどしっかりと抜き切れないという状態が続いていました。これで前がクリアになったときに、本当に速く走れるのか分からなかったですが、あそこで攻めていかないと10位前後で終わっていたと思ったので、とにかくいきました」(関口)

 TEAM IMPULの高橋紳一郎工場長によると、タイトル獲得のためには関口が4位以内に入る必要があったため、そのポジションにいる大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)とのギャップは常にチェックしていたという。

「関口は大津の前に出られるように最後まで引っ張っていくという作戦でした。ずっとギャップは見ていましたし、アウトラップで逆転されないように、ピットストップで逆転できるギャップにプラス1秒分を稼いでピットに入れました」

「向こう(大津)もOTS(オーバーテイクシステム)を持っていたので、やられるかなと思いましたが、たまたまうまくいきました。もし何かひとつでもうまくいっていなかったらダメだったと思います」

 27周目にピットストップを終え、なんとか大津の前でコースに復帰した関口。一度は日立Astemoシケインで横に並び掛けられたが、「“まずいな”と感じることはなかった」と関口は冷静に対応し、ポジションを守りきって4位でフィニッシュした。

 これでcarenex TEAM IMPULは88ポイントとなり、2ポイント差でチームチャンピオンを獲得。2010年以来、11年ぶりの戴冠となった。

2021スーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿 チームタイトルのトロフィーを掲げる関口雄飛/星野一義監督/平川亮(carenex TEAM IMPUL)

 予選で後方に沈んでしまったこともあり、2台揃っての逆転劇に星野一義監督も「今はコメントが出ない、それくらい凄い!」と興奮している様子が印象的だった。

「ホンダ勢も速いし、ずっと余裕がなくて苦しいなかで、みんなよくやってくれました。特にドライバー! よく頑張ってくれました。予選のポジションを考えると、チームタイトルというのは難しいのかなと思っていましたけど、それを2位と4位で終えてくれて……本当に参った! という感じです」

 同じくチームを率いる立場にある高橋工場長も、このチームタイトル獲得に色々な思いを噛みしめている様子だった。

「予選を終えてDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの2台があのポジション(3、4番手)にいて、うちは追い上げていかないといけない状態でした。チームタイトルを諦めていたわけではないけど……けっこう厳しいなと思っていました」

「スーパーフォーミュラはガチンコだし、チーム力の差が出るので……スーパーGTで勝つよりも感動しました。ドライバーもメカニックも、みんな頑張ってくれました」

 そしてドライバーふたりも、一番の目標に掲げていたドライバーズタイトルではないものの、チームタイトル獲得という結果を残せたことに安堵していた。

「チームに貢献するという部分では、これもひとつの貢献だと思います。星野さんの顔はずっと見たかったです。本当はドライバーズチャンピオンも獲りたかったのですけど、まずはチームチャンピオンを獲れて良かったです」(関口)

「ドライバーズチャンピオンはもちろん大事ですけど、チームチャンピオンはチームのためにあるものです。今週はチームチャンピオンを獲るためにやって来たので、そこをクリアできたのは本当に良かったです」

「自分もリタイアが続いたり、クラッシュがあったりしてクルマを壊してしまっていました。そこでチームタイトルという結果でお返しができて、本当にチームのためにもなったし、スポンサーさんのためにもなりました。本当に来年に向けて良い結果で終えられました。来年はドライバーズチャンピオンとチームチャンピオンの両方を獲りにいくしかないです」(平川)

2021スーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿 関口雄飛が2位、平川亮が4位に入り、2021年のチームタイトルを獲得したcarenex TEAM IMPUL
2021スーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿 平川亮(carenex TEAM IMPUL)

© 株式会社三栄