〈新人激突の軌跡 上越市長選、市議補選〉①中川氏4年越しの大願成就 野澤氏「強敵」に猛追も及ばず

 上越市長選挙と同市議会議員補欠選挙(欠員1)が10月31日に投開票され、有権者の審判が下った。市長選は元市議の中川幹太氏(46)が8600票差で前副市長の野澤朗氏(64)を制し、12年ぶりの新市長に。三つどもえの選挙戦となった市議補選は、元中学校教諭の木南和也氏(42)が初当選した。いずれも新人同士が繰り広げた両選挙を振り返る。

 地域課題が山積している中での市長選。歯止めの掛からない人口減少・少子高齢化、感染予防と経済対策の両立が求められる新型コロナウイルス対応に加え、平成17年1月の14市町村合併から16年余りを経た地域自治の在り方が問われた。

 現職の村山秀幸氏(73)が今期限りでの退任を示した中で、4年前の前回市長選での惜敗直後から準備を進めてきた中川氏と、初挑戦を決意し今年5月に副市長を辞した野澤氏が出馬。中川氏が先行し、野澤氏が追い掛ける構図で激しい一騎打ちを展開した。

 中川氏は「地域が主役の自治」や予防介護・医療の推進、歴史文化を生かした「通年観光」などの政策公約とともに、「特定の業界と既得権益によるしがらみを持たない」政治を掲げた。

花束を手に当選を喜ぶ中川氏(10月31日午後11時40分ごろ、上越市西本町1の選対事務所)

 NP0法人かみえちご山里ファン倶楽部事務局長や2期8年の市議経験を糧に、地道なあいさつ回りを軸とした活動を展開。告示前には、元市長で現市議の宮越馨氏(80)と政策協定を結び、強力な支援を得た。

 当選直後、中川氏は「ここまでやってこられたのは、本当に皆さんのおかげ」と支持者たちに感謝し、喜びを分かち合った。

 野澤氏は、41年間の行政経験を土台としてきた。現市政の行財政改革の効果を評価した上で、そこから政策中心の市政への転換を主張。10億円規模のコロナ対策補正予算編成をはじめとする各種政策公約とともに、合併時の担当課長を務めた経験から「13町村の思い」に応えると訴えた。

 出馬表明時からの市民有志の輪に加え、知名度不足を補い、短期での浸透を図るため、政党や企業、支援議員団などによる組織の力を得て追い上げた。だが、「強敵」(同陣営)を抜くことはできなかった。開票結果が出た後、野澤氏は「これほど多くの皆さんからお支えいただいたことを心の底から御礼申し上げたい」と支持者らに感謝した。

会場に入り、集まった人たちに深々と頭を下げる野澤氏(10月31日午後11時25分ごろ、上越市新光町1の上越商工会議所)

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