衆院選ながさき2021・中 区割り改定 合区で公認争いか

「当確」の一報を受け、喜ぶ谷川氏=10月31日、大村市の選挙事務所(写真左) 支持者に笑顔を見せる加藤氏=10月31日、諫早市の選挙事務所(写真右)

 選挙戦中盤の先月24日午後、長崎3区のJR大村駅近くで自民前職の谷川弥一(80)が有権者に支持を訴えていた。「次は絶対に出ないので今回だけはお願いします」。そう言うと、応援に来ていた雲仙市区選出の県議、宅島寿一(51)を後継候補の1人として紹介した。記者から「お披露目か」と問われた宅島は「県連政調会長として各地を回っているだけだ」とかわし、車に乗り込んだ。
 確かに谷川も宅島を後継に絞り込んだわけではない。「一義的には県議の中から探すが、私にすべて甘えられては困る。政治家は郷土のために相当の情熱が必要だ。自分で後援会をつくる気概を持って、私は後ろで応援するくらいじゃないと」。当選後、報道陣にこう述べ、強い自立心を要求した。
 谷川の念頭にあるのは、衆院選挙区画定審議会(区割り審)が進める区割りの見直しだ。2020年国勢調査人口に基づき、来年6月までに首相に改定案を勧告。これを受け政府は公職選挙法改正案を国会に提出し、成立後早ければ来年夏以降に新しい区割りが導入される。その中で本県の小選挙区は4から3に減る見通しだ。
 選挙区の具体的な線引きは未定だが、長崎、佐世保両市をそれぞれ中心とする選挙区と、現在の2区と3区の県央部分を中心とする選挙区になると想定される。自民は2区に今回初当選した加藤竜祥(41)を抱え、谷川の後継はいずれ加藤と公認争いを演じる可能性がある。
 後継に名前が挙がる宅島は2区内の県議だが、加藤の父で引退した前職の寛治(75)とは距離を置いてきた。加藤に近い県議は「次の選挙で2区と3区が合区になっても心配ない。谷川の代わりが誰になろうと党本部は現職優先だ」と意に介さない。実際、今回4区で党県連が7期目の北村誠吾(74)ではなく、県議の瀬川光之(59)を公認申請した際も、党本部は現職優先を盾に北村を公認した。
 ただ県連は9月、寛治の後任を協議する選挙対策委員会で、「選挙区の対等合併なので現職優先と言わない」とし、合区時に再度協議することを確認している。ある大村市議は「無理に加藤を押し込んできたら3区側も黙っていない」とけん制。3区内の県議は「地域のさまざまな課題を誰がまとめられるのか。まずは分裂している県議会の自民系会派を一本化し、ゼロベースで話し合わなければならない」と言う。
 加藤に近い県議も、4区で起きた公認争いを意識し「もめれば自民勢力が一枚岩になれず、次の選挙で勝てない」との危機感がある。対抗の野党は共闘で一定の成果を挙げ、勢いに乗る。合区の候補は、谷川に小差で敗れるも比例復活で初当選した立憲民主の山田勝彦(42)が有力視されている。
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