ホンダ Nシリーズで随一の売り上げを誇るN-BOX! なぜ他のNシリーズは追随できないのか

ホンダ Nシリーズは軽自動車で随一の売り上げを誇るN-BOXをはじめ、さまざまなタイプの軽自動車がラインアップされている。しかし、注目されるのはN-BOXのみで、他のモデルは影を潜めている。なぜ他のNシリーズはN-BOXに追随できないのだろうか。それはN-BOXのキャラクターであるスーパーハイトワゴンならではの装備や機能性にあった。詳しく紹介しよう。

Hondaの軽乗用車「N」シリーズ[右から]N-BOX(エヌボックス)/N-ONE(エヌワン)/N-WGN(エヌワゴン)/N-VAN(エヌバン) ホンダ、「N」シリーズの累計販売台数が300万台を突破[2021年7月6日(火)発表][photo:Honda]

軽自動車の主流はスーパーハイトワゴンだ!

ホンダ N-BOXの快進撃が止まらない。何しろ2021年9月の軽自動車販売台数で依然、1位をキープ。その販売台数は前年比割れしているとはいえ(半導体問題で納期が遅れていることもある)、1万1805台と、2位の日産 ルークスの9708台、3位のスズキ スペーシアの7573台、5位のスズキ ハスラーの5903台を圧倒しているのである。

しかし、Nシリーズには、今ではN-WGN、N-ONEといったハイトワゴン、プレミアムな乗用車もある。N-WGNは同4453台で10位につけているものの(日産軽のハイトワゴンのデイズは11位)、N-ONEはなんと740台で、軽自動車販売台数ランキングの15位にも入らない。よって、Nシリーズの快進撃はN-BOXによってもたらされていると断言していいのである。

他を寄せ付けない勢いのN-BOX

ではなぜ、同じNシリーズなのに、N-WGNやN-ONEがN-BOXに追随できないのか? その理由は、上記の軽自動車販売台数ランキングを見れば一目瞭然だ。

そう、現在の軽自動車の圧倒人気はスーパーハイト系と呼ばれる大容量の軽自動車なのである。空前のSUVクロスオーバーブームに乗って、ハスラーがそれになんとか迫っているということだ。

N-BOXは幅広い世代から好評のサイズ感と使いやすさが魅力

N-BOXが売れている理由は、ミニステップワゴンのような堂々とした、かつ好き嫌いが出にくい端正かつ立派に見えるエクステリアデザインが幅広い層にウケている。

そしてなによりも子育て世代からシニアの乗降にも嬉しい両側スライドドアを備えた室内空間のコンパクトカーも真っ青な広さ、そしてシートアレンジ性の素晴らしさといった使い勝手にあると考えていい。同種のライバルが売れているのも同様の理由からである。

両側スライドドアは子育て世代やシニアからも好評だ

具体的に説明しよう。N-BOXはホンダ独創のセンタータンクレイアウトの恩恵もあって、フロアは地上350~350mmのごく低い位置にあり、当然、両側スライドドアの高さ1235×幅650mmの間口から、たとえ子供を抱いていても、傘をさしていても、ワンステップでスムーズに乗り込み、降りることができる。

N-WGNやN-ONEのリヤヒンジ式ドアとの大きな違いでもある。

N-WGNやN-ONEはヒンジ式ドアのため広く開けなければならない

N-BOXの後席はMクラスボックス型ミニバン並みの広さを確保

さらに身長172cmの筆者基準で前席に座れば、シートハイト調整最下端位置でも頭上に290mm、その背後のフラットフロアの後席に座れば頭上に250~265mm(後席スライド位置による)、膝周りに驚愕の210~420mm!!という、Mクラスボックス型ミニバン並みかそれ以上の空間が確保されているのだ。

もちろん、後席膝周り空間を420mmになるまで後席を後ろにスライドさせれば、天井高が1200mmもある荷室の奥行きは410mm(後席最前端位置だと600mm!!)になるのだが、そうした室内空間と荷室空間の広さを変える自由度もまた、スーパーハイト系軽自動車の使い勝手の良さに直結すると考えていい。

後席もゆったりとしてミニバンクラス並に広々としている

また、N-BOXは後席をチップアップして立てることで、トールモードと呼ばれる、観葉植物などもそのまま置ける室内高が出現するアレンジ性も文句なしに使いやすいのだ。

もちろん、後席を低く畳み、荷室空間を拡大すれば、何と27インチの自転車まで(前輪をフロア側に落とすことで)、そのまま積めるのだから便利このうえなしなのである。これはスーパーハイト系ならではの全高、室内高の余裕、フロアの低さがポイントだから、さすがにN-WGNやN-ONEではできないことだ。

背の高い荷物もラクラク載せられるのもN-BOXの魅力だ

と、N-BOXの室内空間の、筆者の身長基準のデータばかり並べても、N-WGNやN-ONEとの関係が分かりにくいので、両車の寸法も紹介したい。

N-WGNは前席頭上に250mm、後席頭上に195mm、膝周りに最大320mm。N -ONEともなると、前席頭上に190mm、後席頭上に120mm、膝周りに200mmと、一気に室内居住空間は狭くなってしまう。

それでもN-WGNなら狭さなど感じることはないのだが、N-BOXと比べたり乗り換えたりすれば、やはりN-BOXほどの広さ、それに伴う快適感は得られない。

N-WGNも狭さを感じることは少ないだろうがN-BOXと比べると見劣りする

子供やペットを乗せるユーザーからも好評のロールブラインドも人気に拍車をかけた

子育て世代のユーザーが子供を後席にチャイルドシートを設置して乗せる、あるいはペットをホンダ純正のホンダドッグシリーズのドッグアクセサリーを使用して後席に乗せる際にうれしいリヤスライドドア部分のウインドーに用意された、直射日光を和らげ、車内温度の上昇抑制にも効果があるロールブラインドも、軽自動車ではスーパーハイト系ならではの装備なのである。

後席に乗せる子供やペットを日差しから守るブラインドもありがたい装備だ

つまり、室内空間が4人乗車でも文句なしのゆとりがあり、なおかつ両側スライドドアによって乗り降りしやすく、さらに子供やペットを乗せるのにも最適で、それこそ背の高い荷物や自転車まで無理なく乗せられるのがN-BOXを筆頭とするスーパーハイト系軽自動車ならではの魅力であり、同じようなことはハイト系ワゴンや乗用系軽自動車ではまず叶わない。

スーパーハイトワゴンのN-BOXならではの魅力が詰まっている

価格が大きく変わらないため、万能なN-BOXが選ばれている

多彩なNシリーズの中でも、N-BOXが、というより万能に使え、ファーストカーにもなりうる、見晴らし視界が気持ちよく、それが運転のしやすさにも直結するスーパーハイト系軽自動車の人気がほかを大きくリードするのは、価格差がそれほど大きくないこともあって、当然のことと言っていいのである。

これはライバルメーカーでもまったく同じだ。そしてそうした小さいクルマでも広さ、使い勝手、機能といった魅力が、かつてのミニバンブームのように、今の軽自動車に求められているということなのだろう。

【筆者:青山 尚暉】

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