実は禁句?投手への「腕を振れ」 斉藤和巳さんが「誤解されがち」と語る理由

元ソフトバンクの斉藤和巳さん【写真:松橋晶子】

斉藤和巳さん「腕は振られるものという感覚」

「腕を振れ」。強いボールや速いボールを投げるために、投手をしている少年・少女は指導者から一度は言われたことがあるだろう。しかし、それは誤解を招く表現でもある。球界を代表する捕手・古田敦也さんの公式YouTube「フルタの方程式」で元ソフトバンクの斉藤和巳さんと、元ヤクルトの五十嵐亮太さんが解説した。

【動画】「腕を振れ」だけだと怪我につながる 古田&斉藤和巳&五十嵐による動きを入れた解説

ボールを投げるには当然、腕を振る。だが、言葉通りに体を動かすのではない。2003、2006年に沢村賞を受賞した斉藤和巳さんはこのように説明する。

「よく『腕を振れ』と言われるが、腕だけを強く振るのはボールに力が伝わらないし、怪我にもつながる。下半身と上半身のリズムができていないといけない。腕を振ろうとすると体の開きが早くなる。腕は振られるものというくらいの感覚の方がいい」

斉藤さんは、へその少し下にある丹田を意識しながら、下半身と上半身の動きを連動させることが大切と考えている。その結果、理想的な腕の振りが生まれる。腕だけを強く振っても、ボールに力が伝わらないという。

五十嵐亮太さん「腕を振るのは体重移動や体の回転によって生まれるイメージ」

投球する利き腕を意識しすぎない。ヤクルトやソフトバンクで活躍し、メジャーでもプレーした五十嵐さんも同じ認識だ。「僕は速いボールや強いボールを投げようとした時に、自分の感覚よりもリリースが早くなってしまい、球が抜けたり、体が開きがちになったりした」。斉藤さんと同様に、「腕を振る」のは、体重移動や体の回転によって生まれるイメージと説明した。

斉藤さんと五十嵐さんは、リリースポイントに関しても考え方が一致していた。斉藤さんは「力が伝わるのであれば、リリースポイントはどこでもいい。ただ、ボールをギリギリまで持とうするのは意味がない」と話す。打者に近いところでリリースするのが最も適している投手の場合は問題ないが、球持ちを良くすることを目的にすると、体の開きが早くなり、変化球も早く曲がってしまうという。

「球持ちが良くても打たれる投手はボールを持つ技術が高いだけで、体がうまく使えていない」と斉藤さんは指摘。五十嵐さんも「リリースポイントは人それぞれ。投げ方によってリリースの強さは変わってくるので、自分に合ったものを選ぶべき」と勧めた。(記事提供:First-Pitch編集部)

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