衆院選ながさき2021・下 参院選へ 野党共闘 VS 地力の自民

公示日に4区の北村氏の応援に入った金子氏=10月19日、佐世保市下京町(写真右)「次は私の番」とこぶしを握る白川氏=11月1日、大村市竹松本町(写真左) 

 投票から一夜明けた1日正午ごろ、長崎市の共産党県委員会の事務所。職員が市町別の得票数を確認していると、初当選した立憲民主の末次精一(58)が突然訪ねてきた。「おかげさまで国会に行くことができる。一緒に県民のため頑張りましょう」。終始笑顔の末次に職員から拍手が送られた。
 野党は長崎2~4区でいずれも立民候補に一本化。投票日の本紙の出口調査によると、共産支持層の半数以上が立民候補に投票。4区の末次と3区の山田勝彦(42)が自民候補と大接戦を演じ、いずれも比例で復活当選を果たした。
 だが共闘の内実は少し複雑だ。党レベルでは安全保障関連法廃止を求めるグループ「市民連合」が仲介役となり、立民、共産、社民など野党が「共通政策」を締結。県内の地方組織でも同様の動きが模索されたが、実現しなかった。
 立民は労働団体「連合長崎」の支援を受け、1区で西岡秀子(57)を擁立した国民民主県連とも協力。だが連合、国民ともに共産とは距離を置き、立民支持団体からも共産との共闘に批判の声が上がる。結果、文書は交わさず共産が支援する形となった。さらに国民系の労働団体は、原発政策を巡り合意できなかった山田を推薦しなかった。
 野党が強固な一枚岩となれずとも、山田が自民前職の谷川弥一(80)に肉薄できた要素の一つに、谷川の「高齢」がある。山田は「世代交代を訴え、共感してもらえたのが大きい」と振り返る。4区でも末次が自民前職の北村誠吾(74)と競り合えたのは、「北村の失言への批判など“敵失”があったのも事実」(地元市議)。「好条件でも勝てず成功とは言えない」との厳しい声も聞かれ、立民県連幹部も「党と末次の連携が不十分だった」と言う。
 立民は全国で議席を減らし、2日、代表の枝野幸男は辞任を表明した。今後、来夏の参院選に向け野党共闘路線が議論の遡上(そじょう)に載ることは想像に難くない。

 1日朝、山田は大村市内で市民に手を振り、当選のお礼を述べていた。その横に立っていたのは、参院選長崎選挙区に出馬を予定している白川鮎美(41)。山田の事務所に戻った後、「次は私の番」とこぶしを握り締めた。
 対する自民候補は衆院議員5期、知事を3期務め、参院議員3期目を目指す農相の金子原二郎(77)。今回の衆院選でも劣勢の北村の応援に何度も入り、いまだ衰えない地力を見せた。だが周辺は「3区と4区で顕著だったように世代交代を求める波は間違いなく来る」と警戒感を隠さない。
 共闘と若さで攻勢を強める野党が議席を奪取するのか。それとも自民が固い保守地盤ではね返すのか。県内政界は大きな岐路に差し掛かっている。=敬称略=

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