中嶋一貴「将来を見据えた決定。引退も選択肢のひとつ」WECレギュラー勇退発表後に語った現在の心境

 11月6日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される2021年WEC世界耐久選手権最終戦バーレーン8時間レースを最後に、トヨタWECチームのレギュラーから退くことが発表された中嶋一貴は、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)に留まり、現時点ではアナウンスされていない新たな役割を担う予定だ。

 既報のとおり、2018年から3年連続でル・マン24時間レースを制した一貴が、今シーズンの最終戦となる第6戦バーレーン終了後、9年間在籍したTGRのレギュラードライバーを勇退することが今月3日に発表された。

 バーレーンでメディアに語った36歳の彼は、WECチーム内でのポジションがあることを示唆したが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。トヨタの広報担当者は、12月に予定されているトヨタのモータースポーツ年次記者会見で、このことが一貴の後任とともに発表されることを確認した。

「レースに出られなくなることは、正直に言って少し寂しい気持ちもあります。しかし、公平に見て、私はすでに未来に目を向けています。この話は1カ月ほど前からしていました。私たちはそれについて、将来のことも含めて話し合ってきました」と語った一貴は、選択肢のひとつとしてドライバーとして完全に引退し、新しい役割に集中する可能性も示唆した。

 最終的な決定はしていないものの、現在のシナリオが「もっとも可能性が高い」という。

 今季の一貴はWECと並行して全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦しており、以前にはこれらに加えてスーパーGTも掛け持ちするかたちで、1シーズンで3カテゴリーを戦っていた。

「それは計画の一部ですが、まだすべてを決めたわけではありません」と一貴。

「私たちはまだ、来年なにをするかを話し合っているところです。また、ここ(WEC)でなにができるのか、その詳細をすべて詰めていきたいと思っています」

「どちらもやるということは、ときには少し妥協することになります」

■トヨタ以外のメーカーも参加する数年後のWECを楽しみにしていた

 一貴は、自身がトップレベルのドライバーとして必要なものをまだ持っていると感じており、今回の決定が下される以前には、今後数年の間に自動車メーカーがWECに参入してくることを「楽しみにしていた」と述べた。

「ええ、私自身はそう信じています。先週のレースもそうでしたが、まだちゃんとクルマを運転できますし、レーシングドライバーとして何かをすることができると確信しています」

「正直なところ、それは悲しみの一部です。多くメーカーがやってきて、WECが新しい素晴らしい時代に向かっていることを知っています。そこでは多くの競争が繰り広げられるでしょう。私はレーシングドライバーとして、この新時代のレースに挑戦することを楽しみにしていました」

「その点は実際に悲しい部分ですが、先ほど説明したように、私は将来に対して多くの前向きな気持ちを持っています」

「これはWECだけでなく、TGRのモータースポーツ全般に訪れる大きな変化のほんの一部に過ぎません。持続可能なモータースポーツを可能にする実現するために、今後もさまざまな変化が起こるでしょう」

「我々にはいくつかの変化が必要であり、これはその一部です。私の後任が誰になるかは言えませんが、次世代のドライバー育成の一環でもあります。その一部になれることをうれしく思います」

トヨタGR010ハイブリッドを見つめる中嶋一貴(TOYOTA GAZOO Racing)

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