マクラーレン、エクストリームE“ラウンチカラー”を披露。女性エンジニアのリーナ・ゲイドも加入

 2021年創設の電動ワンメイクSUV選手権、Extreme E(エクストリームE)への参戦を表明し、2022年からの新規参入を予定する“名門”マクラーレン・レーシングは、11月3日付けで現在グラスゴーで開催中のCOP26(国連気候変動会議)に合わせ、来季Season2に向けたラウンチ・リバリーを公開した。

 同時に、すでに発表済みの男性ドライバーであるタナー・ファウストのペアに、今季ヴェローチェ・レーシングから同シリーズへのスポット参戦も果たしたニュージーランド出身のWRC世界ラリー選手権経験者、エマ・ギルモアの起用も決定。そしてレースエンジニアにはアウディスポーツ時代にル・マン24時間制覇も達成したリーナ・ゲイドの加入がアナウンスされている。

 10月31日よりスコットランドのグラスゴーで開催されている『国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)』の会場にて“プリンス・オブ・ウェールズ”ことチャールズ公とのメディア会合に臨んだマクラーレン・レーシングCEOのザック・ブラウンは、その席上に著名な気候学者であるカルロス・ドゥアルテ教授に加え、ワンメイク車両のラウンチ・カラーリングのデザインを担当したヴィック・リーと、チームの新たなエンジニアに就任したリーナ・ゲイド、そしてマクラーレン史上初の女性契約ドライバーとなったエマ・ギルモアを伴った。

 ニュージーランドの国内ラリー選手権では3年連続でランキング2位を獲得し、ミツビシ・ランサーエボリューションやスバル・インプレッサWRXなどをドライブしたギルモアは、ラリー・ジャパンやAPRC(アジア・パシフィック・ラリー選手権)のラリー北海道などを皮切りに、いくつかのWRCイベントにも参戦。近年は地元NZを中心にスズキ・スイフトで戦って来た。

 そのギルモアは、グリーンランドで開催された2021年第3戦、北極圏『Arctic X Prix』にて「ディフェンディングチャンピオンとして、2019年に獲得したタイトルの防衛に挑みたい」というジェイミー・チャドウィックの希望を受け(見事、最終戦アメリカの勝利でシリーズを連覇)、ステファン・サラザンとのペアでエクストリームEのイベントを経験しており、北米のラリークロス・シーンのみならず世界的な人気選手として活躍するタナー・ファウストとの強力なペアを構築することとなった。

北極圏、アマゾン、砂漠、海の4つのバイオームを通じて「レースカレンダー全体を表現した」という
タナー・ファウスト(右)との強力なペアを構築することとなったエマ・ギルモア

■リーナの妹、ティーナもエンジニアとしてプログラムに参加へ

「マクラーレン最初の女性ドライバーであることを非常に光栄に思っている。ニュージーランドで育ったブルース・マクラーレンと彼のマクラーレン・レーシングは、モータースポーツ界の頂点と見なされている。そのマクラーレンと、この独創的シリーズで戦うことは特別な機会ね」と、チーム加入の喜びを語ったギルモア。

「このシリーズは男女平等を体現し、地球と社会に影響を与える重要な問題に対処する素晴らしいプラットフォームでもある。これまでのキャリアで得たスキルを総動員して、次世代の女性ドライバーやエンジニアたちを鼓舞したいと考えているわ」

 一方、そのペアを支えるトラックエンジニアに着任したゲイドは、マクラーレンがカナダのマルチマチック社とヴィークルダイナミクスに関する提携を結んだことも受け、同社で2018年から重要な役職を担当してきた彼女が新たな職務も引き受けることとなった。

 2011年当時に所属したアウディスポーツでル・マン24時間を制覇した彼女は、その後も耐久レースの最高峰で2勝を挙げると、北米インディカーではシングルシーターのリードエンジニアも経験。2018年よりマルチマチック社のヴィークルダイナミクス・センターマネージャーに就任すると、スポーツカー耐久シーンにカムバックし、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では同社と提携するマツダのDPiプログラムを担当してきた。

 そのゲイドは、今回のエクストリームEに向けた新プログラムに際し、F1ではウイリアムズ、フォース・インディア、アルファタウリなどで仕事をし、プロドライブやシュコダなどラリー界でもエンジニアとして働いた経歴を持つ妹のティーナとともに、ワンメイク電動SUV『オデッセイ21』を走らせる。

「これは私たちやマルチマチックにとって新しい分野であり、学ぶための大きな機会になるエキサイティングな挑戦ね」と意気込みを語った姉のリーナ。

「マクラーレンは素晴らしいチームを結成し、私たちはすでに仕事を始めている。このプロジェクトでティーナと一緒に仕事ができることにもワクワクしているし、数年前にはスーパーリーグ・フォーミュラで一緒に働いたこともある」と明かした、FIAのGTコミッション代表も務めるリーナ。

「家族の秘密の公式は何かとよく聞かれるけれど、実際はとても簡単よ。両親は、私たちが『信じられないほど一生懸命働いている限り、やりたいことは何でもできる』といつも言っていたからね」

ザック・ブラウン(左)とともにチャールズ公(中央)とのメディア会合に臨んだリーナ・ゲイド(右)
「我々にとって最初の女性ドライバーが、創設者ブルース・マクラーレンの出身地であるニュージーランド生まれであることも誇りに思う」とザック・ブラウンCEO

© 株式会社三栄