アルゼンチン初戦はリンク&コーの新人がデビュー戦ポール・トゥ・ウイン達成/TCR南アメリカ第5戦

 ウルグアイでの連戦を経て、10月30~31日にアルゼンチン初上陸を果たしたTCRサウスアメリカ・シリーズの第5戦は、大物ゲスト不在となったリオ・クアルト戦でこの週末がTCRデビューのエバー・フラネトヴィッチ(リンク&コー03 TCR/PMOモータースポーツ)が、自身初のポールポジション獲得からレース1を“ライト・トゥ・フラッグ”で制する離れ技を演じる結末に。

 一方、初年度前半戦からシリーズを牽引してきたぺぺ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/W2レーシング)も、3位表彰台獲得などでポイントスタンディング上の優位を奪還している。

 この10月末からアルゼンチンに舞台を移したTCRサウスアメリカは、11月に首都ブエノスアイレスでの“エンデュランス戦”を経て、コルドバのオスカー・カバレンから現状開催地未定の最終戦へと、都合4戦が同国内で開催されるスケジュールが確定した。

 その第5戦を前に、ここまでリンク&コー陣営としてWTCR世界ツーリングカー・カップ参戦中のサンティアゴ・ウルティアを招聘するなど話題を作ってきたPMOモータースポーツは、新たにプジョー308 TCRの2台を追加投入するとアナウンスし、都合4台体制の大所帯でリオ・クアルトのパドックに姿を現した。

 すべてドライコンディションで実施された公式練習から一転、直前の大雨でフルウエットと化した予選では、このレースからPMO陣営に加わったフラネトヴィッチが躍動。

 地元出身でマイナーツーリングのカテゴリーに参戦して腕を磨いてきた29歳は、コースオフ頻発で赤旗中断が繰り返される難しいセッションを読み切り、再開後のわずかなチャンスにロドリゴ・フラッカー(ヒュンダイi30 N TCR/ペルー・レーシングチーム)を0.169秒差で抑え、初参戦ながら栄光のポールシッターの座を射止めた。

 その一方で、アルゼンチン最大の人気シリーズであるスーパーTC2000(STC2000)にも参戦中のホセ-マニュエル・サパーグ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/スクアドラ・マルティーノ)は5番手、前戦で連勝を飾り一躍タイトル候補に躍り出た電動ツーリングカー選手権、PURE ETCR(ピュアETCR)に参戦しているロドリゴ・バプティスタ(アウディRS3 LMS/コブラ・レーシング)は6番手、そしてオリオラは7番手に終わるなど、実力者たちがグリッド後方に沈む厳しい予選セッションとなった。

レース1に向けては、実力者たちが後方グリッドからの巻き返しを強いられる苦しい展開になった
ライバルの予選位置や天候も味方につけ、エバー・フラネトヴィッチ(Lynk&Co 03 TCR/PMO Motorsport)が完璧なデビュー戦初勝利を飾った

■レース2でも新たなシリーズウイナーが誕生

「こうしてデビューレースでポールポジションを獲得できてとてもうれしい。ラップごとにクルマに順応できたし、素晴らしいチームワークだった。明日はどうなるかまだ見極める必要があるけど、今のところ順調に進んでいるよね」と語ったフラネトヴィッチ。

 その言葉どおり、開けた日曜の現地午前9時にスタートしたレース1は、小雨が舞うコンディションのなか濃い青をまとうリンク&コー03 TCRが盤石のレースを披露。

 背後では7番手スタートのオリオラが一時はフラッカーを仕留めて2番手まで上がるものの、最終ラップ最後のコーナーで再逆転を許す劇的な展開で決着し、無傷の17周を終えたフラネトヴィッチがデビュー戦でのポール・トゥ・フィニッシュを達成。2位フラッカー、3位オリオラの表彰台に、ホンダのサパーグとラファエル・レイス(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/W2レーシング)が続くトップ5となった。

 続いて前日の予選トップ10リバースが採用されたレース2は、ロイ・ブロック(アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR/KMWモータースポーツ・ウィズ・プロップカー) が先頭でスタートを切ると、すぐさまオリオラが主導権を奪取してターン1へ。しかしその背後でレイスらが絡んだマルチクラッシュの煽りを受け、オリオラも巻き添えとなりセーフティカーが導入される事態となる。

 すぐさまリスタートが切られたものの、このアクシデントを誘発したとしてアウディのバプティスタがペナルティを課されると、終盤に強まった雨脚や首位バトルの間隙を突き、フラッカーがリードを奪うことに成功。フラネトヴィッチとその僚友エルネスト・ベッソーネ(リンク&コーCo 03 TCR/PMOモータースポーツ)を従え、こちらもシリーズ初勝利を手にした。

「とても良いレースで、多くのバトルがあったね」と喜びを語ったヒュンダイのフラッカー。「序盤には多くの“事件”を回避できたし、目まぐるしく状況が変化する中でもレースペースは素晴らしかった。今シーズン残りの準備が整ったね」

 この結果、4位フィニッシュを果たしたオリオラが188点として10点差でバプティスタの逆転に成功。続く第6戦は、11月13~14日に前述のとおりブエノスアイレスにゲストペアを招いての耐久戦が予定されている。

レース1で一時は2位に浮上しながら敗れたぺぺ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/W2 Racing)だが、R2の結果も含め選手権首位を奪還
「とても良いレースで、多くのバトルがあったね」と、こちらもレース2で自身初優勝を決めたロドリゴ・フラッカー(ヒュンダイi30 N TCR/Perú Racing Team)

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