ドラゴンスピード、LMP1カー『BR1』でのWECハイパーカークラス参戦を検討

 ドラゴンスピードのチーム代表を務めるエルトン・ジュリアンによると、ドラゴンスピードはWEC世界耐久選手権のトップクラスに参戦するため、2022年にノンハイブリッドLMP1カー『BRエンジニアリングBR1・ギブソン』を復活させることを検討しているという。

 現在、オレカ07・ギブソンを用いて同シリーズのLMP2プロ・アマクラスに参戦しているアメリカ国籍のチームは、FIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)によって2022年末までの期間限定で、ハイブリッドを搭載しないLMP1カーの使用が承認されたことを受け、ダラーラ製のル・マン・プロトタイプカーをハイパーカークラスに投入する可能性がある。

 2022年のハイパーカークラスでは、アルピーヌ・エンデュランス・チームがこの“特別措置”の恩恵を受け、今シーズンに引き続きオレカ製のLMP1カー『アルピーヌA480・ギブソン』での参戦を予定している。

 ドラゴンスピードは2018/19年のWEC“スーパーシーズン”でBR1・ギブソンでのキャンペーンを実施したが、チームがWECとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ、さらにIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の一部レースでLMP2カテゴリーにふたたび焦点を合わせて以来、LMP1カーはアイドル状態が続いている状況だ。

 ジュリアンはSportscar365に対し、「明らかに、LMP2のスペックが変動しさらに減速を強いられると噂されているなかで、我々はLMP1マシンで何かできないかという可能性を検討し続けてきた」と語った。

「しかし、グリッケンハウスやアルピーヌ、そして我々が過去に経験したことを聞いてみて欲しい。その活動に資金を出してくれる人たちは、(勝利の)チャンスを得るために特定のパラメーターを求めてくるんだ」

「我々のクルマ(BR1)は、今コースを走っているものよりも、おそらく1周あたり8秒は速いだろう」

「過去には『私たちを捕まえることはできない』と言われたこともあった。実際にそれは無理だった。今ではル・マン・ハイパーカー(LMH)よりも速いが、それでも(性能調整を受けた後で)競争ができるという保証はない」

「その疑問が解ければ、我々は実際にペンを走らせ、前に進むことができると思う」

■ハイパーカークラス用にデチューンすれば「素晴らしい走り」をするクルマになる

 ジュリアンは、旧規定のノンハイブリッドLMP1カーがバランス・オブ・パフォーマンス(BoP:性能調整)を受けた後でも競争力を保てるのであれば、トップカテゴリーに戻ることに「新たな関心」があると述べている。

「(できることなら)ふたたびトップクラスに行きたい」と同氏。

「私たちはトップカテゴリーに行くためにクラスを駆け上がった。そして、まだそこへ行くためのマテリアルを持っている」

「幸いなことに、このクルマは来年もレースができるという点で、まだ価値がある。ただし、ルールブックに一文を加えるだけで、クルマに何も変更を加えずに再ホモロゲーションするには、おそらく50万ユーロ(約6600万円)という高額な費用が必要になる」

「アルピーヌとしては、そうせざるを得なかったのだと思う」

「我々の支援者はインディカーに戻るか、LMDhプログラムを行うか、その間を埋めるこのコンセプトに興味を持っている」

 ジュリアンは、彼らのLMP1カーが現在のハイパーカークラス用にデチューンされた場合、信頼できる候補になる可能性があると考えている。

「許容範囲内であれば充分に走ることを知っているので、あのクルマをコースに戻したいと思っている」と語ったジュリアン。

「あのクルマの問題はル・マンで3分18秒台(のタイム)を出していたことだ。セブリングでは1分42秒8を記録し歴代のコースレコードを更新したが、その夜にトヨタが我々よりも速いタイムを出してそれを奪っていった」

「我々のマシンは限界だった。安いクルマで速く走ろうとしすぎたんだ」

「もしデチューンして、ただクルージングをするだけなら、これまでの問題がすべて修正され素晴らしい走りをするクルマになるだろう」

「しかし、誰もチャンスがないところで走りたいとは思わない。プライベーターではどうでしょう?」

 ジュリアンは2022年のその他の選択肢について、LMP2クラスへの復帰を挙げているが、そこではELMSのプログラムを除外した可能性が高い。

「(WECの)LMP2を続けるという選択肢はつねにある。LMP2クラスには素晴らしいチームが揃っている」と彼は述べた。

「私たちはここで、彼らが作り上げた重要なカテゴリーのタイトルをかけて戦っている。才能あるドライバーやチームが参加する、最高の戦いのひとつだ」

ガルフカラーに彩られたドラゴンスピードの10号車BRエンジニアリングBR1・ギブソン 2019年ル・マン24時間

© 株式会社三栄