運用方針、プロはどう見る?「貯金1:投資2で資産形成を計画。投資の目標は年利6%」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、今年から投資を始めた30代の独身男性。貯蓄1に対して投資2の割合で資産形成を計画中。また、年利6%を目標にしたポートフォリオを組んでいるつもりだそうですが、プロの視点にこの運用方針はどう映るのでしょうか? FPの伊藤亮太氏がお答えします。


今年から投資を始めました、同時に家計改善を図っています。

現在つみたてNISA・確定拠出年金(iDeCo及び企業型DC)・投資信託を徐々に運用しており、今後月額2万ほどUS$の積立を行い、適宜米国ETF及び米国株の購入を考えています。貯金+投資で月額12万ほどにする予定です。

収入が時間外勤務に左右されるため、月の支出を14~15万に収めるようにしながら月の貯金額は変えずに投資信託及び海外投資の月額を増減させながら調整しようと考えています(半年ほど生活費の改善を図り、最低必要生活費が13万程で推移しているため)。またボーナスについては、買付余力として貯金とは別に蓄えておこうと考えています(生活防衛資金として500万貯まったところで、以降は全て投資に回す予定です)。

今後結婚の予定はなく、自身の老後資金形成のためと思い投資を始めましたが、現状とりあえず出来ることをやっているだけなので、今後この運用を続けたとしてどうなるのか?がイマイチ不透明な状態です。

現在月利0.5%(年利で約6%)を目標として運用をしているつもりですが、果たして老後の資産形成に向けて正しい運用が出来ているのでしょうか?(資産形成のため株式に多めに振り分けていますが、確定拠出年金については適宜スイッチングをしていくつもりです)

また将来的には持ち家が欲しいと考えていますが、住宅ローンは使いたくないと考えています。漠然とした質問で恐縮ですが老後資金+マイホーム購入を目標として考えた場合のアドバイスなど頂ければと思います。

【相談者プロフィール】

・男性、30代後半、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(神奈川県)

・毎月の世帯の手取り金額:25~35万円前後

・年間の世帯の手取りボーナス額:60~80万円前後

・毎月の世帯の支出の目安:13万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万円

・食費:2万5,000円

・水道光熱費:1万円

・通信費:1万円

・お小遣い:5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万5,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):30万円

・現在の投資総額:つみたてNISA25万円(先進国株 6:バランス 3:国内株 1)、確定拠出年金も同様の比率で運用(現在DC+iDeCoの総額35円程)、投資信託10万円(国内外REITや金ETF欧州・新興国株式など10銘柄(アクティブ投信4銘柄含む)

・現在の負債総額:0円

伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太です。回答いたします。

まず、現状からみるに、毎月の手取り収入を保守的に25万円、毎月の生活費を15万円とすると、10万円は貯蓄や投資に回せる資金といえます。このうち、3万5,000円を貯蓄し、6万5,000円もしくはそれ以上の余ったお金を投資に回すというイメージですね。貯蓄を1として投資を2という割合で今後運用していく形かと思われます。そして、ある程度積極的な運用を行う方針と思います。

年利6%を目指すのは長期的には厳しい⁉️

単純計算で年間120万円+年間手取りボーナス60万円(保守的に見積もります)=180万円が今後運用していくor貯蓄していく金額の最低限となります。仮に何も運用しなかったとしても、180万円×20年=3,600万円は60歳までに貯めることができるといえます。あとはどう運用し、どう資産形成していくかにかかっています。

ご相談者の場合、月利0.5%(年利6%)目標となっていますが、これは長期的に見るとなかなかハードルの高い目標です。昨今の株価上昇の恩恵を受けていれば、目標を到達している可能性は十分ありますが、今後はそうそう簡単にはいかないと思います。そのため、ここでは年3%程度で運用できたとして見積もりたいと思います。スイッチング(投資信託の買い替え)もうまく利用してください。

貯蓄の残りとボーナスを年利3%で運用できたら?

仮に月3万5,000円→年42万円は貯蓄とし運用率は年0%と保守的に見積もります。残り部分とボーナスの合計年138万円を年3%程度で継続して20年間運用を行っていった場合どうなるでしょうか。ここでは簡単化のために、もともと運用している70万円は年3%で20年間運用していると仮定します。

結果、貯蓄は42万円の20年間で840万円、投資部分は3,834万円、合計で4,674万円となります。厚生年金も受け取れるでしょうから、老後資金としては問題ない金額と捉えます。ちなみに、25年間運用した場合には、貯蓄は1,050万円、投資部分は5,177万円となり、合計で6,277万円となります。

これらの金額には、住宅購入費用などは考慮していません。また、相談者は生活防衛資金として500万円貯めたら後は投資に回すというお考えですが、それも考慮に入れていません。堅実に今のスタイルでいくなら、というケースで想定しています。

もちろん、500万円を超えた部分も投資にまわしても構いません。その場合には、仮に年3%で増やせるならさらに資産を増やすことができることになります。

年利3%の運用でも十分なので無茶は禁物

ここまででいえることは、年利6%ではなく、3%程度でも老後資金を形成していくのであれば十分可能であること、無茶は禁物であることです。参考にしてみてください。配分に関しては、金ETFからREIT、株式まで幅広く分散できていると思います。積極的な運用を展開していくのであればこのようなスタイルでOKだと思います。ただし、年によっては大きな変動がある場合があります。下がっても上がっても、中長期的に見て世界経済が成長している限り、気長に持ち続けていければよいと考えます。

住宅購入の費用の目安は?

住宅購入に関してですが、どの程度の住宅を希望されているのか、また神奈川県のどのあたりにお住まいを希望されているのかわからなかったため、なんとも言えない状況です。お一人で持ち家を検討されるのであれば、手狭にならない程度の大きさの物件でもよいかと思います。地域によって、また新築か中古かでも金額は大きく異なってきます。老後資金2,000万円と考えるのであればそれ以外の残りの金額を住宅に充てることは可能です。2,000万円~2,500万円といったところでしょうか。お一人であればもっと安い物件も見つかりそうだとは思います。どこかで運用資金を取り崩し、支払いに充てるのでもよいと考えます。

あくまでもお聞きしている内容だけで判断しています。人により、お金を使いたいと考える部分は異なりますので、一つの参考としてみてください。まずは年3%程度での運用を堅実に行い、6%を目指せるなら目指すといった方法がよいのではないでしょうか。

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