〈動画あり〉退任の村山上越市長 12年間市政運営に気概 災害・行財政対応に信念

 上越市の村山秀幸市長は8日、3期12年務めた市長を退任するに当たり、記者会見に臨んだ。数々の災害の対応、14市町村の大合併後のまちづくり、行財政改革など取り組んできたことを振り返りながら、中川幹太新市長にもメッセージを送った。

 (冒頭は所感を述べる)すこやかなまち、市民がど真ん中、をテーマ、キーワードに掲げ、市民中心のまちをつくっていく、そのまちがすこやかであり、そこに暮らす人々も心身共にすこやかになることが合併市町村に大切と思っていた。トップリーダーとしてありたい姿を自分の中に決め、強い意志、信念を持ちながら、にこやかに人の話を聞ける人間でありたい。他者に対する寛容、自己への謙虚さ。その二つの言葉には排他性がない。自分に課した大きなテーマとして取り組んできた。

時に笑顔、晴れやかな表情で12年の上越市政を振り返る村山市長

 国際化、カーボンニュートラル、多様化社会など、大きな変化の時代に来ている。行政も市民も変わらないといけない時代、対応力が求められる。高齢化への対応も問われる。私の12年は大きな変化の前。厳しい時代だとは思うが、新しい市長の下、市民も行政も果敢にチャレンジし対応してほしい。

 ―本日、退任を迎えた心境は。

 何日か前から数多くのメールを頂いている。皆さんに支えられ、育ててもらった12年間。きょう朝、近所のご夫婦が最後だね、行ってらっしゃいと送ってくれたのが印象的。しんみりするかと思ったが、わりかし、きょうの天気のようにうれしい一日になってほしい、いい日になればと思っている。

 ―どんな12年だったか。

 私にとっては市長になることが青天の霹靂(へきれき)だった。市長になることを全く考えていなかった。自分の人生にとって、ないことがあったなあと強く感じている。市民から支えていただいた12年間だった。

 ―一番の思い出は。

 北陸新幹線開業や直江津港のエネルギー港湾としての発展に立ち合うことができた。また、自分の中では災害に相当気持ちを移しながらやってきた。緊張の日々があった。東日本大震災、板倉区国川の地滑り災害、豪雨、昨冬の大雪、1年半に及ぶコロナ禍など。避けて通ることはできなかった。対応力、想像力が問われた。

 ―行財政改革を推し進めてきた思いは。

 副市長の時に上越の状況を学ぶことができた。全体の状況を見ると、市民の信頼を得る行政サービスをするには財源の確保が必要。しっかりとした行財政がなければ成り立たない。強い思いの中でスタートした。行財政改革は不断に取り組んでいくものだ。

 ―人口減少問題対応の難しさは。

 人口減少を止めることは日本全体でもできない。人口減少を認めながらどう施策を打っていくかが大事。私は、止めるということではなく、緩和するという言葉を使ってきた。人口減少を緩和しながら地域に活力をつくる施策が必要。

 ―14市町村合併がもたらしたものは。

 14市町村の合併は異質の共生。異なった文化、風土、成り立ち、歴史があり、それぞれの個性を一緒にして(新市を)つくろうという選択だったと位置付けてきた。これからは行政が何かしてくれるということではなく、行政と自分たちの関わりの中で、何ができるかということを考えていく時代。変化をくみ、市民がそれぞれ理解し、自分のこととして考えながら行政と共に歩んでいく方向性が必要。

 ―やり残したものは。

 二つある。下水道事業が企業会計化され、企業会計が顕在化、はっきりとしてきた。市の財政の中では大きなウエートを占めてくる問題。もう一つは第三セクター。各市町村が造り、効用はあるが、利用者が大きく減ってきている。J―ホールディングスをつくって取り組む方向性を出したが、思うようにいかなかった。今後の施設のありようについてもまとまりがつかなかった。次の市長にお願いすることになる。

 ―市民の声をどう反映してきたか。

 いいことは後でいい、悪いことは早く教えてほしいと職員に伝えてきた。地域の人が何を悩んでいるのか、どれだけ行政に反映できるのかと考えてきた。最初の選挙で牧区の山間の集落を訪ね、おばあちゃんが出てこられ、手を握って涙ながらに「あんちゃ、頼むわね」と。こういう話はたくさんしていきたい、市民の生の声を聞いていこうと思った。あの光景は一生忘れられない。市民の思いと行政が重なり合うことが大切。

 ―県職員時代を含めて50年間の思いは。

 1971年に県庁に奉職してから、指導し、支え、慕ってくれた上司、同僚、部下のおかげ。公務員生活で学んだことが12年間、力になったし、問題を処理していく時に大きな方向性を示す知識となった。

 ―今後の予定は。直接的、間接的にも市政への関わりは。

 今までできなかったことに少し取り組みたい。地域の中で何かお手伝いすることはできるかもしれないが、市政に私自身が能動的に関わることは考えていない。

 ―新市長への要望は。

 思い、約束したことをしっかりと実行し、信頼を得てほしい。市民から選ばれた市長。自信を持って、市民の付託に応え、信頼感ある市政運営を。職員と共にその方向性を定めて活躍してほしい。心から思っている。

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