長崎県教委 いじめ対応遅れる 報告書公表 重大事態と判断するまで2カ月

 長崎県教委は8日、昨年9~10月にかけて県立高校3年だった元女子生徒が「刃物と思われるようなものでグラウンドシューズを切られた」などと被害を訴え、心身共に不安定になり一時的に不登校状態になる「いじめの重大事態」が起きていたと明らかにした。県教委は学校内に設置した調査委員会による報告書を公表し、学校側の重大事態への対応の遅れを認めた。
 県教委は「(組織として)いじめの認知と危機意識の共有ができておらず(県教委への)報告が遅れ、関係機関の連携や支援が機能しなかった」と述べた。元生徒は現在、「環境も変わり、穏やかに新しい生活を送っている」という。
 文部科学省のガイドラインでは、いじめにより生命や財産に重大な被害が生じたり、長期欠席を余儀なくされたりする重大事態について、事実関係が確定した段階ではなく、「疑い」が生じた時点で速やかな対応が求められている。
 今回は、昨年9月中旬に元生徒から相談を受けた担任らは当初、嫌がらせ事案として対応。その後、被害生徒の父親から病院の診断書などが提出され、学校が重大事態と判断したのは約2カ月後だった。報告書では「9月中旬から組織的な見守りや支援を強化していれば重大事態になることを防げたのではないか」と指摘している。
 県教委は「担任らは起きた事案に対し丁寧に対応した」とした上で、「学校長が『重大事態』への対応をしっかり認識していたかは疑問が残る」とした。
 重大事態の調査結果の公表は、文科省のガイドラインを踏まえ、被害生徒や保護者の同意を得た上で、プライバシー保護や公表の意義などを勘案し県教委が判断する。今回は保護者らの「学校対応に苦しむ子どもを減らしてほしい」との思いも強く、公表に至った。報告書は19日まで県ホームページで公表している。


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