<金口木舌>ニカラグア、貧困の現実

 中米のニカラグア大統領選でオルテガ氏の連続4選が伝えられている。「独裁者」「米が制裁を強める方向」。小国のニカラグアだが、米国とは因縁の仲とも言える

▼1920~30年代、ニカラグアにはアウグスト・セサル・サンディーノという「英雄」がいた。農民で指導者となり、米国の軍事占領に抵抗。34年に米の支援を受けたソモサ・ガルシア将軍に暗殺された。ソモサ一族は親子三代で79年まで親米政権・独裁を敷いた

▼ニカラグア革命でソモサ一族を倒したのがサンディニスタ民族解放戦線のオルテガ氏。米CIAの介入で傭兵(ようへい)が組織され89年まで10年も内戦が続いた

▼戦争と米国の経済封鎖は国をぼろぼろにした。07年に大統領に返り咲いたかつての「敵」で、反米独裁色の強いオルテガ氏に米国は強硬に出るのだろうが、懸念されるのは民だ

▼2000年代にJICA(国際協力機構)で派遣され、2年間、極度の貧困の現実に向き合い活動した。路上で生活し物乞いする子どもらの多さ。左手に靴磨きのブラシ、右手にはシンナーの瓶。目はうつろでふらふらしている

▼かつてスペインに侵略、植民地にされ、先住民は殺され、財宝は盗まれた。その歴史は沖縄の琉球併合や沖縄戦にも重なる。ニカラグアはいまだにその歴史の負の遺産と腐敗政治が影を落とす。先の見えない人々を思うと、胸が痛い。

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