親の指導だけでは「可能性に蓋をする」 レッド吉田さんが下した“人に預ける”選択

お笑いコンビTIMのレッド吉田さん【写真:高木希】

全国各地に“猛者”が…熱いオヤジは自分だけではなかった

高校時代に甲子園に出場したお笑いコンビ「TIM」のレッド吉田さんは、5人の子どもを持つ父親。現在、小学5年生の三男・運(めぐる)くんをプロ野球選手にする目標を掲げ、親子二人三脚で奮闘している。すでに小学5年生でも有望な選手も多くいます。連載「レッド吉田の“巡る”野球界」。9回目は「子どもの見守り方」について語ってもらった。

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僕は運と一緒に野球をしていて、結構、熱いオヤジなんじゃないかなという自負がありました。しかし、自分だけが熱いと思っているのは大間違いで、全国には熱いオヤジがいっぱいいます。前回の連載で、運が元ヤクルト・坂元弥太郎さんの野球塾に通っていることをお話しましたが、ここにもいました。僕が足元にも及ばない熱いオヤジが。

塾には運より3学年年下の小学2年生で、かわいい顔をした男の子がいます。びっくりするのは、この男の子は自宅のある練馬から自転車で野球塾に通っています。塾があるのは所沢ですよ!

火曜、金曜の週2回、毎回です。この前、天気があまりよくなかった練習日、男の子のお父さんに「きょうも自転車ですか?」と尋ねたら、「まさか、こんなに雨が降るとは思いませんでした。この後、自転車で帰ります」と笑顔で答えていました。努力すれば必ずプロ野球選手になれるというわけではありません。それでも、人のやっていないことを継続する。こういう思いが夢を実現させるんだと思います。僕は、いかに自分がぬるいのか痛感しました。全国の熱いオヤジたちと、僕も戦っていかなければいけません。

見つめ直した子どもの見守り方と接し方

弥太郎さんの野球塾を選んだ理由は、運に考える力が付くと思ったからです。そして、もう1つ。運だけでなく長男や次男の子育てを振り返った時に、子どもの見守り方、接し方を見つめ直しました。僕は父親として語彙力が十分だと思っていませんし、感情的にもなってしまいます。僕1人で運に野球を教えていても可能性に蓋をしてしまうと感じました。そこで、「それなら、人に預けよう」と弥太郎さんに任せることにしたわけです。

僕は自分が高校まで野球をやっていたこともあって、自分で教えたくなります。長男の時から繰り返していました。運にも細かいところまで教えようとしていました。そして、できないとイライラしてしまいます。運もやる気がない時に怒られると、テンションが下がります。

お互いにぶつかって、「きょうの練習はおしまい」という時が多々ありました。焦りも出てきます。ゴールデンエイジと言われる小学生のうちに、運にはここまでできるようになってもらいたい、休んでいて大丈夫なのかという気持ちが生まれてきます。

運の同級生で成長が早くて体の大きい子がすごい当たりを打つと「負けていられない」と思ってしまいます。でも、これは過程なんです。プロ野球選手を目指す上でゴールは高校卒業時点なのに、小学生の今、競おうとしてしまっていました。

「焦ったら駄目」大切なのはお互いを信じる力

ここで焦ったり、怒ったりしていたら、運はオーバーワークで怪我をしたり、メンタルのバランスを崩したりするかもしれません。「焦ったら駄目」とようやく気付きました。全てを自分でやろうとする焦りから解き放たれた結果、弥太郎さんに預けようと思えました。

僕自身が焦らないためにも、子どもが焦らないためにも、大切なのはお互いを信じる力が必要だと感じています。それを踏まえて、どんな練習をしていくか子どもと一緒に考えていきます。自分主導ではなく、子どもと一緒に。

運に「きょうは何をやりたい?」と聞いて「バッティングやりたい」と言われたら、バッティングを一緒にやります。運の気持ちが乗ってきて、こっちが守備をやらせたいと思ったら「広島の菊池選手のあのプレー良かったよな。やってみようか」と声をかけると、流れで守備練習に進めます。

それから、あまり周りを気にしないで運自身が成長しているかに集中します。1か月おきに成長しているかを確認して、もし成長していなかったら何が足りなかったのかを運と一緒に考えます。「1か月の30日間で、10日しかスイッチが入っていなかったんじゃない。それを15日に増やしたら、もっとパフォーマンスが上がるんじゃない」と子ども主導で考えさせて、僕がサポートするように心がけています。そうすると、子どもは親に依存せず、お互いに信頼が生まれると思います。

○プロフィール
レッド吉田 1965年10月30日生まれ、京都府出身。名門・東山(京都)で1983年の夏の甲子園に出場する。ゴルゴ松本とともにお笑いコンビ・TIMを結成し、バラエティ番組で人気に。野球が大好きで、5児の父としても奮闘中。三男・運(めぐる)くんをプロ野球選手にするために立ち上げたYouTubeチャンネル「レッド吉田の野球子育て奮闘記~めぐる巨人への道~」を開設中。(記事提供:First-Pitch編集部)

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