中間決算1229銘柄を分析してわかった、好業績企業の特徴

米国市場でNYダウ平均やナスダック総合指数などが史上最高値の更新を続けるなか、日経平均は3万円を前に足踏み状態です。

自民党が衆議院選挙で単独過半数の議席を獲得すると政権基盤の安定を好感して大幅高となりましたが、3万円回復までは材料不足といった情勢です。岸田総理や内閣には景気刺激的な大規模な財政政策を期待する声が高まっており、マーケットは具体的な政策が出てくるのを待っているような雰囲気もありそうです。

こうしたなか10月下旬から日本企業の中間決算発表が始まり、佳境を迎えつつあります。今回はアフターコロナを見据える中での日本企業の決算概況や、特に好調な業種や銘柄の特徴をご紹介します。


資源価格上昇で明暗分かれる

3月末決算を採用しており、11月8日までに7~9月期の決算を発表した企業のうち前年同期と比較可能な1,229銘柄を集計しました。

まず概要をまとめると、売上高は前年同期比9.4%増、経常利益は44.7%増といずれも堅調です。昨年の同時期はまだまだ世界的に新型コロナウイルスによる混乱が大きかった時期ですから良くなることはある種当然とも言えますが、着実に企業業績は回復してきています。

続いて業種ごとの好不調を見てみましょう。売上高・経常利益ともに、鉄鋼や海運業、石油石炭製品、卸売業(商社)などが大幅な増収・増益でした。原油を中心とした資源価格の上昇や世界的な景気回復が追い風となる業種の好調が目立ちます。逆に資源価格の上昇がコスト圧迫要因となる業種は苦しい状況です。電気ガス業や小売業などは大きく利益を減らしています。

カギは「〇〇不足の解消」

特に業績の好不調が目立った銘柄をみていきましょう。まず、ソニーグループ(6758)の決算は圧巻の内容でした。中間決算として売上高は過去最高となり、通期の業績予想も上方修正しています。ゲーム、音楽、映画など幅広い分野で好調が続いており、世界的な半導体不足でプレイステーション5の十分な供給ができていないなか、供給が正常化すればさらなる業績の上積みも期待されます。株価は決算発表の翌日に2%近く上昇、翌々日も5%超の大幅高となりその後も堅調に推移しています。

三菱商事(8058)も非常に良い決算を発表しました。7~9月期の営業収益は前年同期比28.5%増の3兆9,330億円、経常利益は3倍近い2,515億円となりました。資源価格の高騰が追い風となり、好調な業績を達成しました。しかし三菱商事の株価は発表日(14時に発表)、翌日とも3%近く下落しました。好業績はある程度予想されていたことや株価が高値圏にあったことから利益確定売りに押されたようです。

日産自動車(7201)も期待を上回る好決算で株価が大きく上昇しています。7~9月期の売上高は1.1%増の1兆9,387億円とほぼ横ばいでしたが、経常利益は前年同期の4億円からなんと942億円と900億円以上の大幅増となりました。あわせて今期の業績予想を上方修正したことも好感されて、発表翌日の11月10日前場終了時点で前日比7%以上も株価が上昇しています。こちらも半導体不足の影響で販売台数は想定を下回ったものの、販売費用等をコントロールしながら増益につなげたようです。

一方、残念ながら決算が冴えなかった企業もあります。例えば、任天堂(7974)は減収・減益のさえない決算でした。7~9月期の売上高は26.7%減の3,016億円、経常利益は26.8%減の1,076億円となりました。昨年の同時期は新型コロナウイルスの影響により巣ごもり需要が特に増加した時期でしたので反動減は仕方ない面があるのと、こちらでも半導体不足の影響でゲーム機のSwitchの減産を行うと発表しました。

これまでお読みいただいた方はおわかりの通り、多くの企業に「半導体不足」という問題がのしかかっています。巣ごもり需要による需要の増加+新型コロナウイルスの影響で十分な供給体制を組むことができないというダブルパンチが発生し、私達の生活にも影響を与えています。

逆に言うと、「半導体不足」が解消してくれば企業決算に好影響を与えてくるとみられ、一段の業績改善も期待できるかもしれません。経済正常化の観点からも、新型コロナウイルスに対して効果の高い経口薬の一刻も早い登場が望まれそうです。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

© 株式会社マネーフォワード