ケーシー・ストーナーが語る引退後とロッシとのライバル関係/MotoGP特別会見(後編)

 2021年MotoGP第17戦アルガルベGPの開催前日となる11月5日、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベにケーシー・ストーナーが登場し、共同記者会見を行った。

 ストーナーは元MotoGPライダーで、2007年にドゥカティで、2011年にホンダでチャンピオンを獲得すると、2012年シーズンをもって27歳の若さで引退。また、MotoGPレジェンドとして殿堂入りしている人物だ。

 引退後は、2013年からHRC(ホンダ)のテストライダーを3年間務め、ホンダRC213Vを開発する傍ら2015年にはMuSASHi RT HARC-PRO.から鈴鹿8耐に参戦。2016年から3年間は、ドゥカティのテストライダー兼アンバサダーに就任し、MotoGPオフィシャルテストなどで走行して2018年に契約が終了した。

 その後は、公の場に姿を現すことはなかったが、11月5~7日に行われたMotoGP第17戦アルガルベGPに訪れ、1回限りの記者会見で現役時代のレースやバレンティーノ・ロッシについて語った。

ケーシー・ストーナー/2021MotoGP第17戦アルガルベGP

──引退後、歯痒い気分になることはあるか?ストーナー:あるとすれば、予選のときくらいだろう。正直なところ、レースの日をそれほど楽しんだことはない。時には楽しくて簡単で、すべてがうまくいくこともあった。

でも、それは……ギリギリのところにいると、簡単にミスをしてしまうものだ。残念ながら、ミスをしたくないというのが僕の性格の一部になっていた。ただ外に出て、快適に、自然に走りたいというわけではなく、「大失敗したくない」という気持ちが強かったね。

なぜなら、僕に何かを期待している人たちがチーム全体にいるからだ。だから、晩年にはそれにうまく対処できるようになり、それほど心配しなくてもよくなった。でも、もう一回願いを叶えたり、レースに出たいとも思わない。

フリー走行や予選、特に週末は楽しかったよ。確かにテストはダメだね。練習と予選は、すべてが揃うといつも楽しいものだった。そして、1周か2周の間、可能な限り全力で走ることができた。

すべてがうまくいったときは、レースで勝つことよりもずっとスリルを味わうことができた。なぜなら、レースでは全力で走ることはなく、タイヤや燃料を管理しなければならず……常に状況を管理しなければならないし、全力で走ってクラッシュしたら、自分がバカみたいに見える。

そのため、常に我慢する要素があった一方、予選では多くの場合、自由に行動することができた。それがとても楽しかったんだ。

ケーシー・ストーナー/2021MotoGP第17戦アルガルベGP

──バレンティーノ・ロッシとのライバル関係についてストーナー:もし、バレンティーノがまだレースを愛していたら、レースをしない理由はない。僕自身は、それができないだろう。なぜなら、僕にとってレースとは勝つことだからだ。

たまには勝てないこともあるが、同時に、朝起きてレースをするのは勝つためだった。だから、競争力のあるトップを走れないのは本当につらいことで、バレンティーノがトップにいないのも寂しい。ここ2、3年は、彼が他のライダーとバトルしているところを見たかった。そうすれば、素晴らしいレースになったと思う。前のシーズンのようにね。

僕とバレンティーノは、素晴らしいバトルを繰り広げてきたし、素晴らしいライバル関係にあった。いいところも悪いところもあって、自分の思い通りになることもあれば、そうでないこともあった。

しかし、バレンティーノとのレースで素晴らしかったことがひとつある。それは、コース上でも、コース外でのメディア対応でも、彼から学ぶことができたことだ。彼は常に非常に精通していて、非常に賢く、狡猾だった。

だからこそ、僕は多くのことを学ぶことができた。また、彼の時代に彼とレースをしたことで、僕のキャリアにおける功績がより一層認められるようになったと思う。

ケーシー・ストーナー/2021MotoGP第17戦アルガルベGP

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