なぜ西浦ではなく川端と勝負? 明暗を分けた原監督の敬遠策に専門家も疑問

巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】

「西浦と川端を比較して、なぜ川端との勝負を選択することになったのか…」

■ヤクルト 5ー0 巨人(CSファイナル・11日・神宮)

「JERA クライマックスシリーズ セ」ファイナルステージ第2戦は11日、神宮球場で行われ、ヤクルトが5-0で巨人に快勝した。ヤクルトはアドバンテージを含めて3勝0敗とし、日本シリーズ進出へ王手をかけた。ヤクルトOBで現役時代に外野手としてゴールデングラブ賞7度を誇った野球評論家の飯田哲也氏は、この試合で明暗を分けたポイントに巨人の原辰徳監督が命じた敬遠策を挙げた。

ヤクルトは1-0とリードして迎えた6回の攻撃で、先頭の村上が左前打。この打球を巨人の左翼手ウィーラーが後逸し、村上は一気に二塁を陥れた。続くサンタナの打球も平凡な遊ゴロだったが、坂本の悪送球で無死一、二塁に。中村の送りバントで1死二、三塁とチャンスを広げた。

それでも、中4日で先発した巨人のエース菅野はオスナを空振り三振に仕留めて2死まで漕ぎつけた。問題はここからだった。原監督がベンチから出て自らマウンドへ。内野陣を集めて策を授けた上で、続く8番・西浦直亨内野手に対する申告敬遠をコール。満塁策を取ったのである。

続く9番・投手の高橋は、既に102球を投げており、この段階で交代が濃厚だった。ネクストバッターズサークルでは“代打の神様”の異名を取る川端慎吾内野手がバットを振っていた。「西浦と川端を比較して、なぜ川端との勝負を選択することになったのか……」と飯田氏は首をひねった。

西浦はこの日、2回に先制の中犠飛を放っていたとはいえ、レギュラーシーズンでは92試合で打率.223。一方の川端は、代打打率.366(82打数30安打)、出塁率.416、1本塁打18打点と圧倒的な勝負強さを誇っていた。さらに、満塁としたことで、菅野には四球も許されないというプレッシャーが加わった。

飯田氏は読み解く原監督の意図は「高橋を降板させることを最優先に考え…」

果たして、菅野は川端にファウルで粘られた末に、カウント3-2から7球目のストレートがすっぽ抜け、痛恨の押し出し四球を与えた。これで緊張の糸が切れたのか、続く塩見泰隆外野手にも左中間を破る3点三塁打を浴び、菅野はノックアウト。この時点で試合の大勢は決まった。

「この日の菅野はただでさえ、アドバンテージを含めて0勝2敗の状況での先発で、絶対に負けられない重圧がのしかかっていた。丁寧過ぎるほど丁寧に投げた結果、球数がかさんでいた。その上、満塁の状況で川端と相対しなければならなかったのは酷だったと思います」と飯田氏は見る。

巨人ベンチはなぜ満塁策を選んだのか。飯田氏は「私なりに満塁策の理由を考えるなら、巨人ベンチとしては、それまで6回2安打無得点に抑え込まれていた高橋奎二を降板させることを最優先に考え、あえて代打・川端のカードを切らせたのかもしれない」と読んだ。

「巨人にとっては1点ビハインドの場面だったとはいえ、味方の2失策で陥ったピンチを2死まで漕ぎつけ、あそこで西浦を打ち取ればグッと流れを引き寄せられたはず。あの場面が勝敗を分ける大きなポイントでした」とも語った飯田氏。短期決戦には、作戦1つで流れが大きく変わってしまう怖さがある。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2