「監督ではなく選手が怖い」求められる日本一…江東ライオンズ主将が担う“嫌われ役”

江東ライオンズ・小板橋慶太【写真:川村虎大】

「自分で考えて自分で取り組め」何も言わない両親の唯一の教え

劇的な一打で中学3年間の幕を閉じた。11月7日に行われたポニーリーグ(中学硬式野球)の関東コルト選手権大会決勝。3年生にとっては最後の大会で、江東ライオンズが逆転サヨナラ勝ちし優勝を決めた。ただ、決勝打を放った小板橋慶太主将はこれも当然のように受け止める。勝つために築き上げた選手同士の“厳しさ”が生み出した結果だからだ。

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横浜旭峰ポニーに最終7回まで2-3とリードを許しても、小板橋は「焦りは一切なかったです」と振り返る。7回無死満塁で打席に立っても「回るべくして回るんだな」と自信にあふれていた。2ボール1ストライクから待っていた直球を振り抜いた。打球は中堅手の頭上を越える2点適時打となり、4-3と逆転勝利を収めた。

野球を始めたのは、経験者の父の影響ではなくプロ野球がきっかけだった。「僕の家庭は『自分で考えて自分で取り組め。それが自分に返ってくる』という教えでした。だから、北砂リトルへの入団も自分からやりたいと言いましたし、今のチームもそう」。小学4年生の時に、地元の軟式野球チームから北砂リトルへ移った。OBの清宮幸太郎(日本ハム)への憧れからだ。自らが決めた道だから、練習にも厳しく取り組むことができる。

両親は、野球について何も言わない。「言われるのは嫌です。やらされているみたいじゃないですか」と口にする一方で、感謝も忘れない。「やりたいことをやらせてもらっている。だから、全力で野球に取り組んでいる姿を見に来てほしい」と言う。

「怖いのは選手たち」監督、コーチではなく、自分たちがチームを律する

江東ライオンズは今夏の全日本選手権で優勝するなど、常に“日本一”が求められる強豪だ。サインミスや細かいプレーに対しても、練習から監督、コーチは厳しく指導する。だが、小板橋は本当に厳しく“1球の重み”を教えてくれるのは指導者ではないと言う。

「何が怖いって、監督やコーチではなく選手です。おそらく、チームのメンバーは僕のことを一番怖いと思っているでしょう」。ミスをした選手をグラウンド外に出し、目つきが変わるまで戻さないほどだ。普通なら監督がやるような役割まで選手が行い、お互い厳しく指摘しあう環境が出来上がっていた。

中学生同士、人間関係にひびが入ってもおかしくない状況だ。ただ「野球をやるためにここに来ている。野球のためだったら、自分でも言えるし、言われても『なにくそ』と思ってやるはず。そのくらいの信頼関係でやっています」と選手たちの絆は、そんなレベルを超越していた。あくまで、グラウンドは野球をする場所だ。勝つためには嫌われ役になることも厭わない。

将来の夢は甲子園で活躍し、プロ野球選手になること。そのために強豪・江東ライオンズを選んだ。来年からは都内の強豪校で野球を続けることが決まっている。劇的一打で有終の美を飾った男は、自らの意思で未来を切り開く。(記事提供:First-Pitch編集部)

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