【フィギュア】V候補・ウサチョワが涙の棄権 女子選手“ケガの連鎖”止まらぬ要因とは

負傷し抱えられてリンクを離れるダリア・ウサチョワ(ロイター)

ケガの連鎖が止まらない。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦・NHK杯から主役級の選手がまた一人、消えてしまった。

スケートアメリカ2位のダリア・ウサチョワ(15=ロシア)は12日の女子ショートプログラム(SP)の演技直前の6分間練習でジャンプした際に転倒。右股関節を手で押さえ、涙を流してリンクを後にした。結局、この負傷によってV候補の一角は棄権となった。

大会前には全日本女王のエース紀平梨花(トヨタ自動車)が右足関節骨軟骨損傷の回復遅れで欠場。開幕直前には昨季の世界選手権銅メダルのアレクサンドラ・トルソワ(ロシア)も足の故障によるドクターストップで棄権した。立て続けにケガ人が出ている状況について、男子SP首位に立った宇野昌磨(23=トヨタ自動車)は「今、女子のトップは僕たちと同じ構成でやっている」と称賛する一方で「やはり技術の発展とともにリスクは大きく伴うのかなって思う」と警鐘を鳴らした。

強豪ロシア勢に代表されるように、昨今の女子トップ選手は低年齢化が加速。スケートカナダを世界最高点で制した〝怪物ルーキー〟カミラ・ワリエワ(15=ロシア)はジュニア時代の13歳3か月で4回転トーループを成功させている。成長段階で高難度ジャンプに取り組むことで選手寿命は確実に短縮しており、すでに2018年平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ(ロシア)は〝過去の人〟という状況だ。これに元国際審判員の杉田秀男氏は「女子の4回転ジャンプは制限をつけるべきだ。せっかく才能があってもケガしたら何にもならない」と主張している。

宇野は「スケート(人生)を振り返ったときに楽しかったと思って引退してほしい。僕はホントにそう願っています。ケガは本当につらいので」と語るが、進化が加速するフィギュア界は今まさに分岐点を迎えているのかもしれない。

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