【九州場所】一人横綱・照ノ富士 “死角なし”を裏付ける「意識の高さ」と「バックアップ態勢」

土俵入りの横綱照ノ富士(東スポWeb)

連覇へ向けて死角なしだ。大相撲九州場所初日(14日、福岡国際センター)、横綱照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)が新小結霧馬山(25=陸奥)を小股すくいで下して白星発進。元横綱白鵬の間垣親方(36)の引退で名実ともに一人横綱となった場所で好スタートを切った。唯一の懸念材料は古傷のヒザの状態だが、本人の意識の高さに加えて周囲のバックアップ態勢も万全。照ノ富士の体を熟知する人物も活躍に太鼓判を押した。

照ノ富士は相手の粘りに手こずる場面もあったが、最後は小股すくいで料理した。取組後は「すべてが思い通りにいかないもの。その中で白星を一つでも多く重ねていくのがいい」と落ち着いた口ぶり。名実ともに一人横綱となった重責にも「感じていない。土俵に上がったら一生懸命やるだけ」と早くも貫禄を漂わせた。

2年ぶりの九州開催となる今場所でも当然のように優勝が求められる中、懸念材料はヒザの状態だ。師匠の伊勢ヶ浜親方(元横綱旭富士)も「普段行っている病院とは違う所にいかないといけない」と東京と勝手が異なる地方場所の難しさを指摘している。

ただ、それも杞憂に終わりそうだ。一時は序二段まで転落した照ノ富士を支えてきた伊勢ヶ浜部屋専属トレーナーの篠原毅郁氏は「毎日の稽古や15日間の場所中でも必ず毎朝、彼の体を触ってヒザの状態をチェックしている。とにかくケガをしないこと、ケガがあった時はそれにいち早く気づくことに注意しています」と万全を期す。部屋と協力関係にある千葉・船橋の医療機関に在籍していた医師が福岡市内で開業した病院と連携し、バックップ態勢も整えているという。

それに加えて、照ノ富士自身も細心の注意を払っている。篠原氏は「稽古中でも少しでも痛いところがあれば〝首をもんでもらっていいですか〟〝手首をチェックしてもらっていいですか〟とすぐに言ってくるくらい意識はかなり高い。調子が悪ければ『これから病院連れて行ってください』と土曜でも日曜でも言ってくるので大変ですよ(笑い)。でも、自分の体のことは医者以上に知っている」と明かした。

復活の過程で、砂上トレーニングやメンタル強化などのためにヨガにも取り組んできた。「ヨガは自宅でもやっていると思う。横綱はヒザが良くなるため、勝つために必要なもので自分にいいと思うものはすぐ取り入れます。ヨガや砂上トレもそうだし、自分でも調べて効果が出そうなものは試して、合わないならやめるという考え。ヒザはどうやったら治るのか、痛みがなくなるのか、どう動かせば痛みが減るのかを体験から学んでいる。だからびっくりするくらい博識なんです」(篠原氏)

万全な後ろ盾に加えて、自身も決して努力を怠らない。責任を一身に背負う今場所も活躍が期待できそうだ。

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