なぜレッド吉田さんは甲子園メンバー入りを叶えた? 大風呂敷広げた“目標の力”

お笑いコンビTIMのレッド吉田さん【写真:高木希】

三男・運くんの大目標「高卒プロ入り」は変えず「必要なら軌道修正」

高校時代に甲子園に出場したお笑いコンビ「TIM」のレッド吉田さんは、5人の子どもを持つ父親。現在、小学5年生の三男・運(めぐる)くんをプロ野球選手にする目標を掲げ、親子二人三脚で奮闘している。毎回、テーマを決めて、子育てや野球を指導する難しさなどを語ってもらう連載「レッド吉田の“巡る”野球界」。10回目のテーマは「目標設定」。目標は高く設定するが、軌道修正も忘れないよう意識しているという。

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運とは高校3年生の秋にドラフト会議で指名されてプロ野球選手になる目標を立てています。これは長期的な目標ですが、辿り着くために短期的な目標も掲げています。5年生の今年は「ホームラン10本」。昨年末に「来年は何本ホームラン打つ?」と聞いたら「20本」と返ってきました。まだ1本も打っていないですけどね。

最近、「目標は立てたけど、まだ1本もホームラン打っていないな」と話しかけると、運は「5年生になると外野手がボールに追いつくのが早い」と話していました。4年生までは外野の間を抜けて、ランニングホームランを何本か記録しました。今は、右中間に飛んでも二塁打。そうすると、打球を遠くに飛ばすために、あと何キロ体重を増やそうと課題が見えてきます。目先の目標を設定するわけです。

大前提である「高校を卒業したらプロ」というのは変えず、そこに向けて逆算はしています。ただ、設定したレベルに達していない時は、目標にしていた強豪校でプレーするのがベストなのかなど話し合って、必要なら軌道修正しないといけません。子どもは急に身長が伸びたり、短期間で一気に力がついたり、予測できない部分があるので、目標を見直すことは大事だと思っています。

僕自身の子どもの頃の目標は「甲子園出場」でした。中学校は特に野球が強かったわけではなく、ヒットも練習試合を含めて3年間で1本しか打っていません。当時、京都府には平安、京都商業、宇治など強い高校がいくつかありました。その中で、東山高校を選んだのは、中学3年生時の秋の近畿大会で東山がPL学園に勝って春の選抜大会に出場したからです。「これは東山にいい選手が集まってくる」と思いました。

吉田さんは猛者ぞろいの京都・東山高で1983年夏の甲子園メンバーに

入学すると、想像通りすごい選手がたくさん野球部に入ってきました。有名シニア出身の3番打者やエース、中学時代に優勝経験があるキャッチャーもいました。ただ、入部して気付きました。甲子園切符を掴んでも、このメンバーと勝負してベンチ入りしないといけないんだと。

中学の時の有名選手は入部してすぐに打撃練習でホームランを打っていました。僕は無名校でヒットを1本しか打っていないわけですから、レベルが全く違いました。硬式も初めてです。打撃練習をしてもヘルメットの重さに負けていました。でも、しばらくすると、才能のある選手が辞めていくんです。

部に残っても怠ける選手も多かった。僕と同じくらいのレベルの選手は、あきらめて辞めていきます。僕は、地道に練習しました。今、負けていても、モチベーションさえ保ち続ければ、3年間で追いつき、追い越せると信じて練習しました。その結果、3年生の春にベンチ入りして、夏もメンバーに選ばれて甲子園に行くことができました。

目標を設定する時に「背伸びをするな」と言われることがありますが、僕は大風呂敷を広げてもいいと思います。高校生までは「甲子園の優勝投手になる」というくらいの気持ちの方が能力が伸びて、可能性が広がるのではないでしょうか。

“言霊”という言葉がありますが、気持ちが夢を実現させる、目標を高く掲げている人には奇跡が起きると感じています。自信がないと、目標を口に出すのは恥ずかしいかもしれません。でも、口に出した方がポジティブにいられますし、社会に出てからもプラスになると思います。「日本一の会社をつくる!」と宣言するような人からはエネルギーを感じますよね。

○プロフィール
レッド吉田 1965年10月30日生まれ、京都府出身。名門・東山(京都)で1983年の夏の甲子園に出場する。ゴルゴ松本とともにお笑いコンビ・TIMを結成し、バラエティ番組で人気に。野球が大好きで、5児の父としても奮闘中。三男・運(めぐる)くんをプロ野球選手にするために立ち上げたYouTubeチャンネル「レッド吉田の野球子育て奮闘記~めぐる巨人への道~」を開設中。

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