日本の教育の窮地を救った?!『柴山プラン』とは?乙武洋匡が自民党・柴山昌彦氏に迫る!

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今回は2020年7月11日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは自民党・柴山昌彦議員です。柴山プランや日本の教育における課題について伺いました。

 

ICTで教育改革!『柴山プラン』とは

元文部科学大臣の柴山議員。乙武氏は、「柴山プランの策定が目玉だと思います。柴山プランのプレゼンをお願いしてもいいですか?」とリクエストします。

柴山議員は、「私は文部科学大臣の前に総務副大臣を経験し、そのとき特に力を入れていたのが情報通信政策ICT(情報通信時術)の利活用でした。総務副大臣時代に文部科学省へ出向し、教育の現場でICTをしっかり活用すること(フューチャースクール推進事業)を進めていました。

そして文部科学大臣就任直後、最初に申し上げたのが全ての小中学校で2020年代初頭に遠隔教育を実現させることそのための教員の能力を充実させることオンラインやICTの機器といった環境を整えることでした。あわせて、AIやITにおける人材の抜本的な教育改革を進めていきましょうということで、柴山プランを取りまとめました。それを踏まえて、新時代の学びを支える先端技術活用推進方策を令和元年6月に打ち出しました」と話しました。

柴山プランに対して、文科省はどのような反応だったのでしょうか。

「予備校や大学では遠隔授業も当たり前だと思いますが、特に小学生のような発達段階初期の児童に対しては、先生が横に立って手取り足取り子どもたちとの人間関係を築いていく中で教育をしていくことの重要性が強調されていました。

ただ、個別最適化された教育メニューを作ったり、生徒がITを使って課題をこなしたりすることには、ポジティブ面もあります。不登校の方や入院中の方でもそういったことを活用できるということで、多くの自治体や教育専門家の中には、『これを積極的に推進すべきだ』という意見を持った人もいました。遠隔授業オンライン学習の推進について、とても進んでいる自治体もあれば、あまり進んでいない自治体もあります。

文科省の従来の考え方として、遠隔教育で授業をするには生徒の脇に当該科目の先生がいること何か分からなかったりトラブルがあったりしたときは、先生と生徒の直接的なコミュニケーションによるサポートが必要だということを掲げてきました。ただ、これをずっと守っていると、遠隔授業のメリットはほとんど活かされないことになります。

政府の規制改革推進本部でも、『遠隔教育を大きく進めていくべきだ』という提言がなされていましたし、私もそのような考えを持っていました。文科省の中でも、当時の初等中等教育局長は遠隔教育について理解のある方で、『大臣主導でしっかり進めていきましょう』と仰ってくださった。

学校の現場や庁内で従前の考えを持っていた方はいたかもしれませんが、仮に不都合がある場合にはどうやって手当をしていくかというフォローをすればいいことです。柴山プランを進めるべきだということで、実際に予算をつけたり様々な工程表を作ってもらったりしていたところで、新型コロナウイルスが発生したんです」と柴山議員は話しました。

新型コロナウイルスの発生が追い風に?

「新型コロナウイルスが発生し、家庭学習が極めて重要だということに多くの方が気が付きました。特に地方やITインフラが十分に整っていないところでは学校のノウハウもあまりなく、宿題を紙で出すだけで後はノーフォローというところもありました。

そんな中、スマホのアプリで勉強するなど涙ぐましい様々な取り組みがなされたと思います。そういったことを一つの追い風にして、たとえば家庭の教育に必要な通信環境を整えるためにWi-Fiルーターを貸したり、タブレットの1人1台配布を進めたりするための予算や契約に向けたアクセルが踏まれる原因になりました。萩生田前文部科学大臣の時にはGIGAスクール構想という名前になっていますが、その原点は柴山プランではないかと私は考えていますので、これをもう少し応援したいと思っています」と柴山議員は話しました。

乙武氏は、「政治家は、失言をしたり不祥事を起こしたりした時はめちゃくちゃに怒られる。それは仕方のないことだと思いますが、その分良い動きをした時にはもっと褒めてもらいたいと思っています。柴山プランはコロナ以前に策定されていたもので、もし柴山プランが策定されていなければ、日本の子ども達の教育はもっと遅れていた。柴山さんに先見の明があって日本の教育の窮地を救ったと思っています」と話しました。

柴山議員は、文部科学大臣時代に学校へのエアコン設置にもアクセルを踏んだのだそうです。

「2019年以降、普通教室へのエアコン設置がスピード感を持って進められてきました。あのケチと言われる財務省に訴えかけて予算を確保したことは、無駄ではなかったと思っています」と話しました。

短い大臣期間でこんなにも政策を進められたのは何故?

乙武氏は、「柴山議員は文教族ではない。大臣の就任期間も11か月と短かった。その中で柴山プランを通したり、エアコン設置の予算案を通したりできたのは何故ですか?」と尋ねます。

柴山議員は、「時代が大変革する中で、科学技術や経済問題にも私は関心がありました。時代の大きな流れや国際化に対応できる人材の育成に思いを馳せていたことが一つだと思います。

あとは、現場や省内の方々との意見交換を一生懸命おこない、特に若手の職員の方がどういうことを考えているのかということに物凄く関心を持っていました。若手の方がアイデアを出したとき、それが上層部を通したものでなくても良いものであれば積極的に取り立てる機会を作りました。組織に所属する多くの方々が、やる気を持ってアイデアを出しやすくした。

私が文部科学大臣になったとき、次官が2代続けて不祥事で辞めたり逮捕者が出たりと、ガバナンスの改革が大きなテーマになっていたときでした。私は弁護士出身なので、法律的な部分でガバナンス改革の経験はありましたが、組織のあり方やメンタリティの部分で色々な方の意見に耳を傾けさせて頂きました。そのことが、短期間で色々なことを手掛けられた要因だったと思います」と話しました。

様々な教育の課題に関心を持ち続けていきたい

続けて乙武氏は、「11か月の間に大きな仕事をやり遂げたわけですが、わずか11か月間だったので、まだやりたいことがあったんじゃないですか?」と尋ねます。

柴山議員は、「累次にわたって議論され続けてきた大学入試改革は、今回改革が途中になってしまいました。格差の問題など色々な懸念が示されたので、一旦立ち止まって見直すこと自体は有意義なことだったのかもしれません。9月入学については、長期的な課題として検討を続ける方針となりました。

それ以外にも、学習指導要領はこれから変わっていくと思いますし、文化系と理科系を世間で起きている事象に対応する形で融合させていくこと、地域で活躍する人材をもっと作っていくこと、普通科高校に通う子ども達のやる気をどう出させるのかということ、障害を持った方々にも能力を発揮できるチャンスを付与すること、外国の方に日本語教育をしていくことなど、教育においては様々な課題が山積しています。

大臣の座は離れましたが、こうしたまだ手掛けられていない課題に関心を持ち続け、しっかり応援していきたいと思います」と話しました。

最後に乙武氏は、「教育にずっとこだわってきた人間としては、そのように力強く言って頂けたことを嬉しく思います」と話しました。

柴山昌彦氏プロフィール

1965年愛知県生まれ。東大法学部卒業後、住友不動産へ入社。1998年に司法試験へ合格し、2000年に弁護士登録。2004年、埼玉8区の補欠選挙に立候補し初当選を果たす。以後当選を重ね、現在7期目を務める。外務大臣政務官、総務副大臣、衆議院内閣常任委員長、内閣総理大臣補佐官、文部科学大臣などを歴任。現在は、自民党埼玉県連会長を務めている。

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