【規制改革推進会議】コロナ抗原検査キットの薬局販売/広告解禁へ議論/「研究用」の流通を懸念

【2021.11.17配信】11月17日に政府の規制改革推進会議「医療・介護ワーキング・グループ」が開かれ、「新型コロナウイルス抗原検査キットに関する規制について」が議題となった。会議委員からは個別商品の広告が認められていない問題点なども踏まえ、OTC化すべきとの意見のほか、「研究用」と称して未承認品が広く流通していることなどに問題意識が示された。会議としては、これらの課題に対応する方向で、年末の「中間とりまとめ」に向けて一定の方針を明確化したい考えだ。

会議側「薬剤師の(オンラインではなく)対面指導がなぜ必要か」

抗原検査キットについては、規制改革推進会議での強い要請を受け、薬局販売がすでに実施となっている。

一方で、会議側は現在の販売における規制や流通実態について大きく3つの問題意識を示している。
1つ目が「無症状者への使用が推奨されていない」こと、2つ目が「OTC化すべきではないか」ということ、3つ目が「研究用と称して未承認品が広く流通している」ことだ。

1つ目の「無症状者への使用が推奨されていない」ことについて会議側は、「確定診断ではなく飲食店やイベント会場などにおける、確定診断ではなくスクリーニング目的の検査を行う場合、無症状
者による利用が可能であることを明確にする必要があるのではないか」として、無症状者への使用を推奨していない厚労省の事務連絡の記述を改める必要性を掲げている。
会議側からは「無症状者の利用は推奨されないとする理由は何か。入場に何らの制約もない状態と比べイベント参加者、飲食店入店者等に関し、確定診断ではなく陽性者をあらかじめ検知し必要な対応をとるため(スクリーニング目的)に抗原検査キットを利用することについて、どのように考えるか。海外ではセルフテストが広く行われているが、我が国では、医療機関を受診しないことによって
感染が潜在化する可能性があると考えるか」といった論点が示された。
抗原検査キットメーカーによっては、感染性がある陽性者についての感度は PCR 検査と遜色はないとの科学的根拠が存在するとの考えもあるとした。

2つ目の「OTC化すべきではないか」ということについて会議側は、「ネット、ドラッグストア、コンビニなど、薬局を含め陳列や広告の解禁を通じた円滑な入手を可能とするため、一般用医薬品
への転換(スイッチ OTC)を早急に実施する必要があるのではないか」と要望している。
「抗原キットを薬局等で販売可能とする場合、販売数量(少量販売)・個別商品の広告・陳列等の規制を撤廃する必要がある。本来的には、OTC 化することで恒久化することが筋ではないか」との要望だ。加えて、購入者に説明内容の理解を確認するために紙文書への署名を求めること等の廃止を検討する必要があるとしている。
販売方法については、「陳列や個別商品の広告が認められない実態的理由、法的根拠は何か」ともし、「第 2 回 WG において医薬品、医療機器の(虚偽・誇大広告ではなく)広告一般の規制に法的根拠はなく行政指導であるとの厚労省回答があった」と提示した。
さらに「薬剤師の(オンラインではなく)対面指導がなぜ必要か。特に、2回目以降の購入者に指導する必要はあるか。また、事務連絡上の指導内容に照らして、指導を行う者が薬剤師以外の者(例えば、イベント主催者)ではどのような不都合があるか。購入時に購入者の署名(しかも紙)がなぜ必要か。署名をした書面はどのように活用されているのか」といった論点も示した。

3つ目の「研究用と称して未承認品が広く流通している」ことについては会議側は、「偽陰性者が感染を拡大する可能性を踏まえ、抗原検査キットなどの検査精度について薬機審査において確認する必要があるのではないか。合わせて、研究用等として未承認製品が市販されている実態に歯止めを必要があるのではないか」と提案している。
「研究用という表示が消費者に『高性能』であるとの誤認を与えているとの指摘があるが、どのように考えるか。適切な規制を行う必要はないか」とも論点を示した。

厚労省側は、無症状者への使用について推奨しないとの記述を見直す方針を示したという。
また、広告の解禁についても見直す方向で検討する考えを示したとされる。
薬剤師の対面指導の要否については厚労省側は明確な立場は示さなかったとされるが、会議側からは、「すでに実施が決まっている『ワクチン・検査パッケージ』では薬剤師の対面指導が必要とされておらずバランスとしておかしいのではないか」との意見が示されたという。

会議は、年末の「中間とりまとめ」において一定の方針を明確化したい考えだ。

<編集部コメント>特例的な対応にも“整合性”は必要では

コロナ抗原検査キットについては、EUの一部の国でその日限りの域間の移動を許可する“デイリーチケット”に抗原検査キットの陰性結果が用いられている事例があるとの情報もあり、薬局販売実施当初から活用方法については論議のあるところだった。
科学的根拠に基づき、例えばイベント実施時など一時的な活用において、我が国でも活用方法を見直していくことはあり得るかもしれない。

一方で、気になったのは会議側が、「医薬品、医療機器の広告一般の規制に法的根拠はなく行政指導であるとの厚労省回答があった」と提示するなど、行政指導を重く受け止めていない節があることだ。コロナ禍という緊急事態ゆえに、特例的・迅速に薬局販売が実施となったコロナ抗原検査キットだが、抗原検査キットだけを広告規制からも除外していくようなことがあると、これまでの医療用医薬品全体の広告のあり方に関して整合性がとれなくなる懸念がある。
会議側の論点にもあるように、広告を解禁するならばOTC化が本筋であり、さらにはOTC化にあたっては厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」での検討を経るのが本筋であろう。

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