西岡剛に監督はできるのか? 秘めた適性…無名だった19歳の覚醒を見抜いた“慧眼”

福岡北九州フェニックスの初代監督に就任する西岡剛【写真:小西亮】

堀江貴文氏ら設立「福岡北九州フェニックス」の初代監督に、求められる適性

阪神やロッテなどでプレーした西岡剛内野手が、来季からヤマエ久野 九州アジアリーグに参入する「福岡北九州フェニックス」の初代監督に就任することが決まった。17日に球団が発表。自身も公式YouTubeチャンネルで報告した。手探りで船出するチームで、プロ人生で初めて指揮を執る立場に。指導者としての“眼力”や、リーダーとしての“求心力”が期待されることになる。

選手としての実績は言うまでもない。ロッテ時代の2005年から2年連続で盗塁王を獲得し、2010年にはスイッチヒッターとしては初の200安打をマーク。最多安打と首位打者に輝き、チームの日本一にも貢献した。2011年にはMLBに挑戦し、2013年に阪神入りして日本球界に復帰。NPB通算1125試合で打率.288、61本塁打、383打点、196盗塁の記録を残し、2019年からは独立リーグに身を置いてきた。

来年には38歳を迎えるが「グラウンドでしか味わえない喜びや悔しさ、もどかしさがある」と現役にもこだわる。北九州では選手兼任で、背中でも手本を示す。一方で、指導者としての役職を担うのは初めて。手探りの球団で、手探りのチーム作りが待つ中、阪神退団後に栃木で過ごした3年間の経験を生かす。

所属した栃木ゴールデンブレーブスでは、NPBを目指す20代の若手たちと一緒に汗を流す日々。聞かれれば、自らの技術や経験を伝えた。ただ、闇雲にエールを送るわけではなく、世界を見た元NPB戦士として時には厳しい指摘も。「NPBはそんな甘い世界じゃない。独立リーグは野球を諦める場所でもある」。仕事としてプレーすることの重みを説き、若き才能たちの長所と短所をあぶり出してきた。

「2年後にすごい選手になる」と予言…無名選手が3割バッターに成長

監督として求められる能力のひとつは、選手を見極める目。その資質を垣間見せた瞬間がある。2019年、台湾プロ野球(CPBL)の味全ドラゴンズに所属していた盟友の川崎宗則内野手のもとを訪ねた時だった。当時、味全は約20年ぶりにチーム復活したばかりで、20代前半の若手ばかり。2020年に2軍リーグ戦、2021年に1軍リーグ戦への参入を控え、強化の真っ最中だった。

西岡はスタンドから練習を眺め、実際にグラウンドに降りて一緒に汗を流す機会も。数日滞在した帰り際、まだ線の細い小柄な19歳の選手を呼び止めた。「2、3年後にすごい選手になると思う。このチームで1番になっても何の意味もないから。もっともっと上を目指せ」。通訳を介し、熱っぽく伝えた。

目を輝かせて頷いていた郭天信外野手は今季、チームトップの打率.302をはじめ、5本塁打、34打点、20盗塁(16日現在)と一気にブレーク。現地では、新人王候補のひとりに名前が上がっている。打撃センスや身のこなし、練習に対する姿勢などに惚れ込んだ西岡の予感は、奇しくも時期までぴったり的中させた。

NPBでは今オフ、日本ハムの新庄剛志監督や中日の立浪和義監督ら世代を彩ったスターたちが指揮官に就任。実業家の堀江貴文氏ら設立した新球団に誕生したもうひとりのスター監督は、どんなチーム作りを見せるのか――。「挑戦し続けることが、僕の人生」。スピードスターの新たなチャレンジが始まる。(小西亮 / Ryo Konishi)

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