<南風>やんばるの森へのオマージュ

 「アートを彩る作品を作っていただけませんか?」。この秋に企業さまの周年を祝う、イベントの会場デコレーションの依頼を受けた。県内外で活躍するカメラマンの沖縄を題材にしたスライドショーと、会場全体を花で装飾するコラボレーションだ。

 2021年7月に世界自然遺産へ登録となった、沖縄県北部の山原。その地での開催ということもあり、「やんばるの森へのオマージュ」と題し、流木を重ね合わせて土台を作り、巨大なセロームの葉、オーガスタの花やストレチアなど数百本の花材を使い、2メートル四方の作品でダイナミックな亜熱帯のジャングルを表現した。

 限られた時間で作る現場での仕事は、ピリッと張り詰めた空気感がある。しなやかにというよりは、自分自身と向き合いながら花一輪の表情を探す。創作するというより、植物を手に取った時のインスピレーションを感じ取りながら、必然とデザインは決まっていく。

 温暖多湿な亜熱帯気候、絶滅危惧種や希少な動植物が生息する世界的にも珍しい深緑の地。原始的なヒカゲヘゴ、白くスズランのようにかわいいリュウキュウアセビ。ヤンバルクイナなどの個性豊かな天然記念物が生息する、沖縄の宝ともいえる奇跡の森は偉大だ。

 今回、やんばるの森をテーマにした作品を創作する中で、父に連れられヘゴの群衆を眺めながら川遊びした深緑の風景と、幼少期のワクワクとした思い出がよみがえった。そして沖縄の自然にずっと魅了されている自分を再認識する特別な機会となった。

 今後は新種の洋花や、ドライフラワーを使ったデザインワークとともに、沖縄の大地で育まれてきた個性豊かな植物たちを主役にした作品作りを、積極的に続けて行きたい。奇跡の森に思いを馳せながら。

(宮平亜矢子、フラワーアーティスト)

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