登戸事件「対象外」で批判噴出 川崎市検討の犯罪被害者支援施策

川崎市役所

 2021年度中の犯罪被害者支援に向けた条例制定を目指している川崎市は18日、「犯罪被害者等支援施策」をまとめ、市議会文教委員会に報告した。委員からは、支援対象者を条例制定後の発生犯罪に限定している点に批判が噴出。条例制定の契機となった19年5月の登戸児童殺傷事件の被害者も対象外といい、「遡及(そきゅう)支援を」「被害者の意見も聞いて」との声が相次いだ。

 市は市議会第4回定例会に条例案を提案する予定。支援施策では、登戸事件などにより支援制度の構築が「喫緊の課題」とした上で、犯罪発生後3カ月間を担う神奈川県の支援を引き継ぐ形で、市が4カ月~2年後の中長期対応をとるとした。ワンストップ支援窓口を設置し日常生活支援や相談支援を行い、カウンセリングや法律相談などで既存施策にもつなぐ。

 県の施策の対象である凶悪犯、性犯罪などの被害者に加え、市独自で粗暴犯、知能犯などの被害者を支援する。一方、登戸事件など条例制定前の被害者は対象外とした。この日の委員会で、地域安全推進課の担当者は「さかのぼって適用しない。ニーズをうかがい既存施策を活用し、適切に支援する」と説明した。

 これに対して委員から批判が相次いだ。押本吉司氏(みらい)は「これまでも登戸の被害者への適用を求めてきた。血の通った条例を」と批判。さらに被害発生日から7年を支援金の対象とするなど遡及支援を行っている兵庫県明石市の例を紹介し、「(遡及の)ぜひ検討を」と要望した。

 また、片柳進氏(共産)は「すでに被害を受けた人は期待している。検討を」と強調し、堀添健氏(みらい)は「いま苦しんでいる人がいるなら、対応する制度設計をしてほしい」と述べた。

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