アルツハイマー治療薬アデュカヌマブが欧州で承認に対して否定的な評価。バイオジェン、エーザイの株価下落 CHMPは、来月、アデュカヌマブの申請に対する正式な意見を採択する予定

【11月18日 Insights4 プレミアム】11月17日、バイオジェンとエーザイから、欧州医薬品庁においてアルツハイマー病を対象として現在承認申請中の治療薬アデュカヌマブ(アデュヘルムAduhelm)に対して医薬品委員会(CHMP)の投票結果で「ネガティブ・トレンド・ボーティング(否定的傾向の評価)」とする投票結果を受けたことが発表されました。

このトレンド投票は、審査過程で医薬品申請に対するCHMPメンバーの意見を聞くもので、審査員の非公式ながら立場を記録するものです。EMAのガイダンスによれば、重大な新情報が提供されない限り、最終的な正式投票は変更されない可能性が高いとのことです。CHMPは、来月開催される会議で、この抗アミロイド抗体アデュカヌマブの申請に対する正式な意見を採択する予定です。

この発表を受けて、バイオジェンとエーザイの株価は下落しました。バイオジェンは11月16日には研究開発部門の責任者であるアルフレッド・サンドロック氏が年末に退職することを発表しており、同社にとり今週2つ目の悪いニュースとなってしまいました。

バイオジェンとエーザイは、欧州に加えてアジア市場にも目を向けております。日本において2020年12月の申請に基づき、今年中に日本の規制当局が決定する可能性があります。

CHMPの勧告に異議申立ても、歴史的にも覆る可能性は低い

RBCキャピタル・マーケッツのアナリストであるブライアン・エイブラハムズ氏がりさーチノーとで、「欧州での販売を失うことは、将来のアデュカヌマブの潜在的な収益の40%を事実上が帳消しになることになる」と述べています。

同氏は、バイオジェンがCHMPの勧告に異議を申し立てることができますものの、そのような戦略の成功率は歴史的に見て約20%と低いと指摘、既存のデータセットから、アデュカヌマブが欧州の規制当局を通過することはないと予想しています。また、仮に承認されたとしても、薬価が高いため、償還が困難になる可能性が高いと同氏は付け加えています。

バイオジェンが実施した2つの重要な臨床試験のうち、アデュカヌマブがアルツハイマー病患者の認知機能低下の速度を遅らせることを示したのは1つであり、FDAの承認決定には賛否両論がありました。米国の規制当局の諮問委員会の一部のメンバーは抗議して辞任し、いくつかの著名な治療センターは、患者にアデュカヌマブを提供しないと公言しています。

苦戦する米国市場

アデュヘルムの売上は、6月にFDAから承認され、第2四半期には160万ドルの売上から第3四半期には30万ドルにとどまり、アナリストの予想を大きく下回っています。これは、年間56,000ドルという薬価、有効性への懸念そして一部の病院や保険会社が利用に対し躊躇していることが原因です。

バイオジェン社の研究開発部門の暫定的な責任者であるPriya Singhal氏は、次のように述べています

「今回のトレンド投票には失望したが、我々のデータの強さを強く信じている。次のステップを検討するために、EMAおよびCHMPとの協議を続けていく」

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