金子農相 諫干視察で意見交換 開門派 30分淡々と 非開門派 和やかに

金子農相に窮状を訴える松本さん(中央)=佐賀市内のホテル

 国営諫早湾干拓事業開門調査の賛否両派と20日面会した金子原二郎農相は、国の従来姿勢を崩さず、開門派に失望感が広がった。一方、非開門派には「最大限に干拓地を生かして成果を上げている。干拓して間違いなかった」と和やかに意見交換。対照的な空気が流れた。
 「いつも通りの顔見せだった」。開門派漁業者の松本正明さん(69)=島原市=は、佐賀市内での面会を残念そうに振り返った。歴代農相が実施してきた意見交換。今回は事業を知り尽くした金子農相だけに「少しは(歩み寄りに)期待していた」。
 堤防締め切り後の漁獲量の激減で、18年間ともに漁をしてきた息子は、家族を養うため数年前に船を下りた。会場でマイクを握り「悔しい、悲しい、怒りでいっぱいだった。和解で、漁業者も生きていける、未来のある海にしてほしい」と改めて訴えたが、手応えはなかったという。
 金子農相はかつて短期開門調査を受け入れた際の農業被害などを挙げ、開門以外の解決を探ると強調。30分余りの面会時間は淡々と過ぎた。終了後、開門派の馬奈木昭雄弁護団長は「本当に解決しようとするお気持ちはない」と農相を批判。「少しでも拒否の姿勢を考え直そうとは言わなかった。今までやってきたことを語られただけ。非常に残念」と失望感を隠せなかった。

金子農相と非開門派との意見交換会=諫早市内のホテル

 金子農相は諫早市の中央干拓地を視察。「国が開門をしない方針を示したことで積極的な事業拡大が図れた」と営農者から説明を聞くと、満足そうに表情を緩め、規模や外国人の雇用人数など次々と質問した。
 同市内のホテルで中村法道知事らと意見交換した後、報道陣に「認識や思いは変わったか」と問われると「ない。現場を見せていただき、営農者の意見を聞いて、改めて良かったと思う」と語った。さらに「諫早市民の皆さんが安心して生活できる環境ができあがっている。開門すればいろいろな問題が生じ、皆さんが大変な不安感を持ってしまう」と主張した。


© 株式会社長崎新聞社