桃田賢斗がドン底から復活V! 大事故に見舞われた20年1月以来の歓喜

桃田賢斗(東スポWeb)

バドミントンの男子シングルス世界ランク1位の桃田賢斗(27=NTT東日本)がインドネシア・マスターズ(21日、バリ)の決勝で、同3位のアナス・アントンセン(デンマーク)を21―17、21―11のストレートで下し、20年1月のマレーシア・マスターズ以来、1年10か月ぶりの優勝を遂げた。

最後のショットが決まると、小さく左拳を握った。相手と握手した後、ラケットを両手で挟んで拝むポーズ。その目に涙はなかった。タオルで汗をぬぐうと笑顔をはじかせ、左手を突き上げて喜びを表現した。

地獄からの生還だった。20年1月のマレーシア大会からの帰国途中、とんでもない事故に巻き込まれた。桃田が乗るワゴン車はクアラルンプールの高速道路を走行中に大型トラックに追突。運転手は死亡し、桃田は顔面3か所の裂傷と全身打撲の大ケガを負った。一命を取り留めたものの、顔面から流血し、救急搬送された際に放心状態で「またバドミントンはできるか」と日本代表の朴柱奉ヘッドコーチに尋ねた。

試練は続いた。帰国後、順調に回復して約3週間後の合宿に参加したが「シャトルが二重に見える」と訴えた。再検査を受けると、なんと「右眼窩(がんか)底骨折」が発覚。復活寸前で全治3か月と診断され、手術を余儀なくされた。精神的ショックに加え、実戦から離れた桃田にとって、新型コロナウイルス禍による五輪1年延期はプラスに働いた側面もあるが、今年夏の五輪では1次リーグ敗退。結局、金メダル大本命と言われながら、再びドン底に突き落とされた。

今大会の優勝は事故に巻き込まれた直前のインドネシ大会以来。苦難が続いた男がようやく浮上のキッカケをつかんだ。完全復活へ向け、ここからは慎重に一歩ずつ階段を上る。

© 株式会社東京スポーツ新聞社