日本Sでプロ初完封「まさかあの高橋奎二が…」 2軍時代の苦労知る燕OBが要因を分析

完封し笑顔を見せるヤクルト・高橋奎二【写真:共同通信社】

自己最多の133球、117球目にこの日最速150キロをマーク

■ヤクルト 2ー0 オリックス(日本シリーズ・21日・京セラドーム)

「SMBC日本シリーズ」第2戦が21日、京セラドームで行われ、ヤクルトが2-0でオリックスに競り勝ち、対戦成績を1勝1敗のタイとした。先発の高橋奎二投手がプロ6年目で初完投初完封。24歳は自己最多の133球を投げ、散発5安打に封じた。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野口寿浩氏が、“生涯一”の投球の要因を探った。

「自分が先に(マウンドを)降りるものか、という気持ちで投げました」。高橋はお立ち台で会心の笑みを浮かべた。試合は、弱冠20歳のオリックス先発・宮城大弥投手との壮絶な投げ合い。中盤までは、6回1死までパーフェクトに抑えた宮城の方が内容でやや上回っていたほどだった。

しかし高橋は粘った。5回まで毎回ヒットを打たれながら、得点は許さない。8回に青木のタイムリーで先制点をもらうと、さらにギアを上げた。その裏、2死一塁で宗に対し初球に投げ込んだストレートは、117球目にしてこの日最速タイの150キロを計測。2点差に開いて迎えた9回も、吉田正、杉本、代打ジョーンズを3人で片づけた。

プロ入り後、レギュラーシーズンで1度もなかった完投を、日本シリーズの大舞台で完封劇で成し遂げてしまった。野口氏は「0-0でしたから。高橋と宮城が張り合い、お互いを高め合った結果でしょう。高橋にしてみれば、宮城にも負けたくない、前日の第1戦で好投した同僚の奥川(7回1失点)にも負けたくない。強い対抗意識が生んだ投球だったと思います」と見た。ポストシーズンのプロ初完投初完封は、今月10日のクライマックスシリーズ、ファイナルステージ第1戦(対巨人)の奥川に続くものでもあった。

安達に与えた2四球のみ、無駄な四球減り「シーズン中通りの投球」

高橋は今季後半から調子を上げ、レギュラーシーズンは14試合で4勝1敗、防御率2.87。野口氏は「急成長した要因は、無駄な四球が減ったこと。ストレートだけでなく、スライダー、チェンジアップなどの変化球で、ストライクを取りたい時に取れるようになりました。高津監督は今季、投手陣に対して逃げずにストライクゾーンで勝負することを強く求めているそうです。高橋はまさにそれを実践している」と分析。「この日も、安達に粘られて与えた2四球だけ。シーズン中通りの投球でした」と評した。

「僕自身も、あの高橋奎二が日本シリーズで完封するなんて……と感慨深いものがある」と野口氏は言う。プロ2年目の2017年、若手成長株として期待されながら左肩を痛めてリハビリ生活を送り、それが癒えたと思ったら今度は腰痛を発症した。当時の2軍監督が高津現1軍監督、2軍バッテリーコーチが野口氏だった。「当時2軍で苦労している姿を見ていた。高津監督の感激もひとしおだと思います」と語る。

ヤクルトは前日の第1戦で、9回に守護神のマクガフが2点リードを守り切れずに逆転サヨナラ負けを喫していた。野口氏は「高橋が完投したことによって、ショックを引きずるマクガフに移動日の22日を含めて2日間、リセットの猶予を与えることができた。これも大きい」とチームへの好影響を強調する。シリーズの流れを引き戻す、大きな完封劇となった。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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