2022年度入試の学部系統動向のキーワードは「法学、獣医、情報」人気

総合型選抜、学校推薦型選抜が始まり、2022年度入試が本格的に動き始めました。大手予備校の模擬試験の結果も出始め、受験生の学部系統の人気についての傾向もある程度見えてきています。相変わらず情報系の人気は高く、この分野での新設学部学科も増えています。これに加えて、2022年度入試では「法学」と「獣医」が注目されます。この2分野は2021年度入試でも志願者数の減少幅が小さいなど、隠れた人気分野でしたが、2022年度入試では注目分野です。

2022年度入試では私立大学の志願者数減少は下げ止まりに

今春、2021年度入試は私立大学の志願者数が大きく減少したことが話題となりましたが、来年2022年度入試ではどうなるでしょうか。駿台予備学校の大学入試情報サイトでは、9月に実施された模擬試験の学部系統別の志望動向が掲載されています。これを見ると国公立大学の志望者数は全体では、ほぼ横ばい(前年比99%)となっています。18歳人口が2万人減少することを考えれば、人気は堅調だと言えるでしょう。

ここ数年、国立大学は学部の新設や改組などによって新しい教育プログラムを次々と展開しています。また、公立大学も新設大学や新学部など先進的な動きもあり、受験生から見た選択肢は広がっています。来年は大阪市立大学と大阪府立大学が統合され、大阪公立大学が誕生するなどダイナミックな変化も見られます。余談ですが、現在の東京都立大学が首都大学東京となった時は、なぜだか穴場になると言われたことで、結果として志願者数が増加しました。ただ、首都圏以外からの出願者が多かったようで、試験当日の欠席者が多かったという現象が見られました。公立大学の統合は定員が増えて入りやすくなるというイメージが受験生にはあるのかも知れません。確かに、理学部、工学部、看護学部など大阪市立大学と大阪府立大学の両方にあった学部は、統合によって学部の定員が増えることになりますので、受験生から見て倍率が緩和されるイメージを持つのも無理はありません。大学入学共通テストの平均点が上がるか下がるかによりますが、志願者が押し寄せる可能性はあるでしょう。

一方、私立大学も駿台予備学校の大学入試情報サイトによると志望者数の全体は横ばい(前年比99%)となっています。私立大学は今春2021年度入試では、50万人以上の志願者数減少となりましたが、受験生一人当たりの併願校数も恐らく例年並みに戻ると予想されますので、来年はそこまでの落ち込みはないものと思われます。

【参考】

駿台予備学校 大学入試情報サイト

大学入試情報マスターに聞く!志望校選びのアドバイス

https://www2.sundai.ac.jp/yobi/sv/news/index.html

→学部系統の人気は、法学、獣医、情報

学部系統の人気は、法学、獣医、情報

模擬試験の学部系統別の志望動向から、受験生に人気の学部を見ると情報系と薬学系は2021年度入試に引き続き高い人気となっています。情報系には、近年新設が相次ぐデータサイエンス系の学部学科が含まれますので、その影響が大きいと言えるでしょう。河合塾 の大学入試情報サイトで「2022年度 新設大学・増設学部・学科一覧」を見ても情報系の新設が多く見られます。ただ、この情報系も、理学系の数学系、工学系の情報科学系、近年のデータサイエンス系など系譜が様々です。さらに社会科学系の情報系もありますので受験生は、データサイエンスという流行の言葉に惑わされることなく、冷静に学部選びをしたいところです。

例えば、ビジネスに生かすデータサイエンスであれば、伝統校の経済・経営・商学系の学部でマーケティング系のゼミに入れば十分に学ぶことができます。というよりもこちらの方が良いのではないかと思うぐらいです。また、既存のデータ分析用のアプリケーションソフトに限界が生じた場合、工学系で情報科学を学んだデータサイエンティストは自ら分析ソフトを作ってしまいます。従来からある伝統学部でもデータサイエンスは十分に学べます。新設されるデータサイエンス系の学部は何が新しいのか、受験生が自分で調べて分からなければ直接大学に聞いても良いでしょう。

情報系以外では「法学」と「獣医」の人気が高まっています。この2分野は2021年度入試でも志願者数の減少幅が小さいなど、隠れた人気分野でしたが、2022年度入試では人気の学部系統と言えます。前述の駿台模試でも法学系は、国公立大学、私立大学ともに志望者数が増加しています。これらの学系の人気について、メディアの入試記事では、法学系人気=公務員志向、獣医人気=資格志向と解説されていますが本当でしょうか。就職氷河期と言われた90年代にはそうした事も言われていましたが、現代の受験生の学部選択は、生徒たちなりの興味関心や理由があって行われていますので、そんな単純な法則で法学人気、獣医人気になっているとは思えません。コロナ禍での不平等、人権問題や社会規範に対する感度が上がったことや環境破壊や自然災害によって被害を受けている野生動物保護への関心がこれらの分野に受験生を向かわせているのが人気の理由なのではないでしょうか(SDGs仮説と言えなくもありません)。

【参考】

河合塾 大学入試情報サイト「2022年度 新設大学・増設学部・学科一覧」

https://www.keinet.ne.jp/exam/future/

情報法、ヒューマンライツなど新しい法学系学部学科も

法学系では2022年度に青山学院大学が法学部ヒューマンライツ学科を新設予定ですが、まさにヒューマンライツ(人権)ですので、先程のSDGs仮説によれば、受験生の関心の真ん中に位置づけられることになります。新設の学部学科は受験生の認知が高まるまでに時間を必要としますので、現段階ではまだ高い注目を集めている状況ではありませんが、今後、受験生がどう反応するか、注目できる新学科です。

この他には、新設学部ではありませんが、2019年に開設された中央大学国際情報学部も情報に関する法律を扱う学部としてユニークな位置づけにあります。この国際情報学部の教育課程表(カリキュラム)を見ると、どう見ても法学系の学部なのですが、学部名に“法”が冠されていないことと国際経営学部と同時期に設置されたことから、「国際系」と認識されているふしがあります。学部の内容が受験生に正しく伝わっていないようですが、情報の法律を学ぶ学部ですので、人気の法学系の中でも現代的な新しい法律分野として注目できます。

高大接続改革も2年目に入り、落ち着きかけているようにも見えます。ただ、多くの入試分析の専門家が、大学入学共通テストの平均点は下がると予想するなど波乱の予感もありますが、一方で現役生、既卒生を合わせても大学志願者の実人数が大学の入学定員を下回るという予想もされています。2022年度入試は受験生にとって大学入試が広き門になることは間違い無さそうです。

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