「一昨年、昨年とは違う」 元捕手が感じ取った日本シリーズ、勝負の“舞台裏”

オリックス・中嶋聡監督(左)、ヤクルト・高津臣吾監督【写真:荒川祐史】

ヤクルト・オリックスの日本シリーズ傾向を野口寿浩氏が分析した

「SMBC日本シリーズ2021」は第2戦を終えた時点で、1勝1敗のタイ。オリックスの日本シリーズ出場は1996年以来実に25年ぶり、ヤクルトも6年ぶりのフレッシュ対決である。史上初の前年最下位同士の対戦は、舞台裏も昨年までとは違った様相を呈している。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析した。

第1戦と第2戦はいずれも、手に汗を握る投手戦となった。第1戦はヤクルト先発の奥川が7回1失点、オリックス先発の山本も6回1失点。第2戦はヤクルト先発の高橋が9回5安打無失点で完封勝利を挙げ、オリックス先発の宮城も8回途中まで1失点の快投だった。

元捕手の野口氏には、昨年までとは違う傾向が見て取れた。「一昨年と昨年はいずれもソフトバンクと巨人の対戦でしたが、ソフトバンクの千賀と甲斐のバッテリーは、一昨年は坂本、昨年は岡本に対し、第1戦でこれでもかというほど内角攻めを徹底。その年の打線のキーマンの打撃を狂わせ、日本シリーズ全体を優位に進めることができました」と回想。

「その点、今年の両チームのバッテリーには、そういう戦略的な意図は感じられませんでした。相手どうこうより、普段通りの投球に集中していた印象です」と指摘する

オリックス・若月健矢【写真:荒川祐史】

ソフトバンクは一昨年は坂本勇人、昨年は岡本を徹底マークした

一昨年の坂本はシーズンMVP、昨年の岡本は本塁打と打点の2冠王に輝き、打線の核だったが、日本シリーズではいずれも打率.077(13打数1安打)に封じ込まれている。ソフトバンクが2年連続で巨人に1勝もさせなかった背景には、これがあった。

「千賀に160キロ近い剛速球があったからこそできた芸当とも言えますがね……」と野口氏。今年の顔ぶれは、今夏の東京五輪で侍ジャパンのエースを張った山本はともかく、他の3投手は球威抜群とはいえ、比較的キャリアの浅い若手だ。

さらに、第1戦と第2戦でマスクをかぶったヤクルト・中村は2015年にも日本シリーズを経験しているが、ソフトバンクに1勝4敗で完敗。オリックスの若月(第1戦)と伏見(第2戦)は初出場だ。シリーズ全体を視野に入れて、ではなく、一戦必勝で臨んだのかもしれない。

周知の通り、日本シリーズは故・星野仙一氏が楽天を率いて巨人を破った2013年以降、パ・リーグ球団が8連覇中。これまでと違う様相が、パ・リーグ絶対優位の傾向をも変えるのかどうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2